市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

首都高ローリー横転炎上事故の賠償を巡る首都高vs出光興産・ホクブ・多胡運輸の訴訟の行方を機構に問う

2012-11-28 22:42:00 | 首都高炎上とタゴ運輸
■今から4年と4ヶ月近く前、平成20年8月3日早朝、首都高5号池袋線の熊野町ジャンクション付近の下り線で多胡運輸のタンクローリーが横転して炎上し2か月半にわたって通行規制が行われるという首都高史上最大の事故が起きました。その後突貫工事で修復工事が進められ、同年10月14日に首都高は上下線とも開通しました。その際、首都高の佐々木社長(当時)は、事故発生から開通に至るまでに要した費用は約45億円について精査した上で、事故を起こした運送会社に請求する予定であることを記者会見で明らかにしていました。

独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構が7階に入っている住友不動産日比谷ビル。
 この内訳は、復旧工事費が20億円で、通行料金の減収額が25億円としており、通行料金は通行止めになっていた8~9月分の収入を、前年同期の額から差し引いた結果、25億円の減収となったとしていました。

 当時、首都高は、「燃料価格高騰による自動車の利用控えの影響も考慮して減収分を精査し、事故を起こした多胡運輸に請求していく予定」とし、「運送会社を利用していた荷主へも責任追及と請求を検討している」と発表し、平成20年度末までにすべての工事を終了し、全費用が確定した後に請求するはずでした。

 ところが、その後、首都高からは提訴の向けた動きが表面化せずに、3年の時効を迎えようとしていました。当会も毎年夏に、損害賠償の件で、首都高に情報開示を請求しましたが、いずれも開示されず、開示請求した情報の有無さえ明かされませんでした。

■こうした状況の下、平成23年10月8日にマスコミにより、首都高を運営する首都高速道路会社が「交通量が著しく減り損害を受けた」と主張してガソリンの運搬を委託していた出光興産を含めて、原因者に対して、34億円あまりの賠償を求める裁判を起こしました。

 報道によれば、この事故について、首都高速道路株式会社は、「復旧工事に多額の費用がかかった上、交通量が著しく減って損害を受けた」と主張して、ガソリンの運搬を継続的に委託していた出光興産のほか、元請の運送会社のホクブトランスポートとその下請の運送会社の多胡運輸に約34億5千万円の損害賠償を求める訴えを3年の時効が到来する直前の平成23年7月に起こし、平成23年10月7日に東京地方裁判所で初めての審理が開かれました。

 このとき、被告とされた出光興産は、首都高の訴えに対して、「今後、どのように対応するか検討していきたい」と話しています。

■しかし、その後、マスコミは沈黙したまま、1年以上経過しました。当会では、今夏もこの件で首都高に情報開示請求をしましたが、またもや不開示とされました。

 通常であれば、損害賠償の民事裁判では1年以上も経過すれば、裁判所から和解勧告が出されて、だいたい決着がつけられるはずです。おそらく、原因者である多胡運輸の素性から、和解交渉は密室で行なわれているものと推察されます。もしかしたら、先週あたり、和解条項が決着した可能性も無きにしも非ずです。

■これまで当会は、多胡運輸のタンクローリーの横転炎上事故による首都高史上最大の物損事故について、被害者は首都高速道路株式会社(首都高)だと考えてきました。そのため、何度も首都高に対して、横転炎上事故の事後処理に関する情報開示請求をトライしてきたのでした。

 しかし、いずれも開示請求は不調に終わり、何一つ開示された情報はありませんでした。

 先日も、出光興産・ホクブトランスポート・多胡運輸を相手取って東京地裁で係争中の裁判情報を首都高に請求しましたが、結果として、不開示とされてしまいました。

■そこで、当会は、首都高のHPに掲載されている「首都高速道路株式会社供用約款」を再度チェックしてみました。

この約款を見ると、第1条で、高速道路を通行し、利用する者はこの約款を承認して同意したものとするとあります。そのうえで、会社の責任と、利用者の責任が次のとおり明記してあります。

**********
首都高速道路株式会社供用約款
(会社の責任)
第7条 高速道路の設置又は管理に瑕疵があったために利用者に損害を生じたときは、会社は、これを賠償する。
2 前項の場合において、利用者に過失があったときは、損害賠償額の算定に当たり、これを考慮することができる。
3 高速道路の設置又は管理に瑕疵がない場合を例示すると、おおむね次のとおりである。
一 利用者の故意
二 会社の責任によらない車両相互の接触若しくは衝突又は落下物等による事故
三 盗難その他第三者による危害
四 天災地変その他の不可抗力
4 次に掲げる事由により生じた損失については、会社は、補償する責任を負わない。
一  第5条の規定に基づく供用の拒絶その他通行の禁止又は制限のための必要な措置
二 渋滞による遅滞
5 前4項の場合において、会社の責任は、利用者がこの約款に従って、高速道路に進入したときに始まり、高速道路から退出したときに終わる。
(利用者の責任)
第8条 高速道路を損傷し、又は汚損した利用者は、当該損傷又は汚損により必要を生じた高速道路に関する工事又は道路の維持に要する費用について、法第40条第1 項の規定により読み替えて適用する道路法(昭和27年法律第180号)第58条第1項の規定に基づき、会社に対して負担金を支払わなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、高速道路を損傷し、又は汚損した利用者は、法第8条第1項第12号の規定により道路管理者の権限を代行する機構から道路法第22 条第1項の規定に基づき当該損傷又は汚損により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の施行を命ぜられた場合は、機構から命ぜられた道路に関する工事又は道路の維持を施行しなければならない。
3 前2項に規定するもののほか、利用者は、故意又は過失により会社に損害を与えた場合は、その損害を賠償しなければならない。
**********

■これによると、会社の責任は「高速道路の設置又は管理に瑕疵があったために利用者に損害を生じたときは、会社は、これを賠償する」としていますが、「渋滞による遅滞」などは保証責任がないとしています。

■他方、利用者の責任としては第1項で、「高速道路を損傷したり汚損した利用者は、修理工事や道路維持に要する費用について、法令の規定に基づき、会社に対して負担金を支払わなければならない」と規定しています。

 ここでいう法令として、「道路整備特別措置法第40条第1 項」を読み替えた「道路法第58条第1項」というのが挙げられています。道路法第58条第1項は、原因者負担金を定めており、「道路管理者は、他の工事又は他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の費用については、その必要を生じた限度において、他の工事又は他の行為につき費用を負担する者にその全部又は一部を負担させるものとする。」とあります。

■利用者の責任として、もうひとつ第2項が規定されています。そこでは、首都高ではなく、その元締めの独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構も利用者の責任を問えることになっています。第2項は「前項の規定にかかわらず、高速道路を損傷し、又は汚損した利用者は、法令により、補修工事又は道路の維持施行を命ぜられた場合は、機構から命ぜられた道路に関する工事又は道路の維持を施行しなければならない」と定めています。


 当会はこの規定に着目し、首都高がこの首都高史上最大の物損事故とそれにかかる原因者らとの争訴関連にかかる情報を不開示し続けているので、これまで対象としていた首都高ではなく、約款に明記された規定に基いて利用者=原因者である多胡運輸の責任を問える立場にある独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構(JEHDRA:Japan Expressway Holding and Debt Repayment Agency)に対して、情報開示請求を行うことにしました。

ロビーの案内板。日本高速道路保有・債務返済機構は7階にある。

 そこで、本日、次の内容の開示請求書を同機構に提出しました。

**********
                    平成24年11月28日
独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構 殿
          氏名又は名称:(法人その他の団体にあってはその名称及び代表者の氏名)
          住所又は居所:(法人その他の団体にあっては主たる事務所等の所在地)〒379-0114群馬県安中市野殿980番地
          TEL ( )
          連絡先:(連絡先が上記の本人以外の場合は、連絡担当者の住所・氏名・電話番号)
     法 人 文 書 開 示 請 求 書
独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律第4条第1項の規定に基づき、下記のとおり法人文書の開示を請求します。
        記
1 請求する法人文書の名称等
(請求する法人文書が特定できるよう、法人文書の名称、請求する文書の内容等をできるだけ具体的に記載して下さい。)別紙記載のとおり
2 求める開示の実施の方法等(本欄の記載は任意です。)
ア又はイに○印を付して下さい。アを選択された場合は、その具体的な方法等を記載してください。
ア 事務所における開示の実施を希望する。
<実施の方法> ①閲覧 ②写しの交付 ③その他( )
<実施の希望日>
○イ 写しの送付を希望する。
開示請求手数料(1件300円)
納付方法:○現金・銀行振込・郵便振替
※ 郵便にて開示請求されます際には、当機構の情報公開窓口に御一報くださいますようお
願いします。
                    以 上
※以下の欄は記入しないで下さい。
主務課
備考
「法人文書開示請求書」(裏面又は別添)
<記載に当たっての注意事項>
1 「氏名又は名称」「住所又は居所」
個人で開示請求をする場合は、あなたの氏名、住所又は居所を、法人その他の団体の場合にあっては、その名称と代表者の氏名及び所在地を記載してください。
ここに記載された住所及び氏名により、開示決定通知等を行うことになりますので、正確に記入願います。
連絡等を行う際に必要になりますので、電話番号も記載してください。
なお、記載に際しては自筆に限らず印刷、ワープロ等による記載も可能です。
2 「連絡先」
連絡等を行う場合に、「氏名又は名称」欄に記載された本人と異なる方に行う必要があるときは、連絡担当者の氏名、住所及び電話番号を記載してください。
3 「請求する法人文書の名称等」
開示を請求する法人文書について、その名称、お知りになりたい情報の内容等をできる限り具体的に記載してください。
4 「求める開示の実施の方法等」
請求される法人文書について開示決定がされた場合に、開示の実施の方法、事務所(情報公開窓口)における開示を希望される場合の希望日について御希望がありましたら、記載してください。
なお、開示の実施の方法等については、開示決定後に提出していただく「法人文書の開示の実施方法等申出書」により申し出ることができます。
※ 「求める開示の実施の方法等」は、任意の記載事項です。また、記載された場合でも、記載どおりの方法による開示の実施ができないこともあります。
<開示請求手数料の納付について>
開示請求を行う場合には、1 件の法人文書について300 円を納付していただくこととなっています。該当する納付方法に○をして下さい。
※ 国の行政機関の場合と異なり、手数料の納付について、収入印紙による納付はできませんので、ご注意願います。
※ 郵送による開示請求を行う場合には、手数料の納付方法について、当機構情報公開窓口にお問い合わせください。
※ 手数料の納付の際は、おつりがでないようにお願いします。
※ 銀行振込により手数料の納付をされる場合は、お振込み名義をお知らせください。
**********
(別紙)
1.請求する法人文書の名称等
平成20年(2008年)8月3日早朝、首都高速道路5号池袋線熊野町ジャンクション付近の下り線で、荷主である出光興産㈱(東京都千代田区)のマークをつけ、元請業者であるホクブトランスポート㈱(高崎市)の下請業者である多胡運輸㈱(高崎市)(以上まとめて「利用者」という)のタンクローリーが横転して炎上した事故で、道路管理者の首都高速道路株式会社が被った損害について、①法令により道路管理者の権限を代行する貴機構が、当該利用者の過失で損傷又は汚損により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の施行を利用者に命じた経緯を示す文書、及び、②利用者の過失により道路管理者の首都高速道路株式会社が被った損害の賠償に関して貴機構が作成もしくは入手した情報のうち、平成20年度以降の法人文書ファイル管理簿に掲げられている次の情報。ただし、いずれも関係情報記載部分のみ。なお、2011年7月に利用者を相手取って首都高速株式会社が計約34億5千万円の損害賠償を求め、東京地裁に提訴した事件にかかる情報も含む。
・役員会の議事録
・監事監査関係
・記者発表
・特殊車輌通行受理・許可一覧
・特殊車輌通行許可番号
・争議関係
・警告書等
・措置命令書管理簿
・措置命令書(控)等
・原因者負担督促状(控)等
・債務引受契約書
・道路資産の現地確認関係
・その他、もしあれば
**********

■同機構も首都高の上部組織であることから、開示請求書の様式も類似していますが、首都高が株式会社化されているのにくらべると、より一層政府機関の色合いを濃くしていることから、首都高とは異なり、もっと積極的な対応をしてもらえるのではないかと期待しつつ、開示請求書を提出した次第です。

 30日以内になんらかの通知があるはずですので、新たな情報が入り次第報告いたします。

エレベータ内の各階表示板。

7階フロア案内図。

【ひらく会情報部・首都高ローリー横転炎上事故調査班】
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