むかしむかし、あるところにマリアという美しい娘と、二匹の子ブタがいました。アリ・アスターが絶賛した、世にも恐ろしいチリ発のストップモーション・アニメーション。
美しい山々に囲まれたチリ南部のドイツ人集落。“助け合って幸せに”をモットーとするその集落に、動物が大好きなマリアという美しい娘が暮らしていた。ある日、ブタを逃がしてしまったマリアは、きびしい罰に耐えられず集落から脱走してしまう。逃げ込んだ一軒家で出会った 2 匹の子ブタに「ペドロ」「アナ」と名付け、世話をすることにしたマリア。だが、安心したのも束の間、森の奥から彼女を探すオオカミの声が聞こえはじめる。怯えるマリアに呼応するように、子ブタは恐ろしい姿に形を変え、家は悪夢のような禍々しい世界と化していく......。
クリストバル・レオンとホアキン・コシーニャの二人組による初の長編映画は、全編カメラが止まることなく、最後までワンシーン・ワンカットで空間が変容し続ける“異形”のストップモーション・アニメーション。チリ国立美術館など世界各地の10カ所以上に実寸大のセットを組み、等身大の人形を用いて撮影。制作過程を展示の一部として観客に公開するという独自のスタイルで完成させた。その類い稀なる才能は、『ミッドサマー』のアリ・アスターが一晩に何度も鑑賞し、自ら二人にコンタクトをとったというエピソードからも伝わるだろう。世界が熱狂したアニメーションがついに日本上陸!〈同時上映〉短編『骨』監督:クリストバル・レオン、ホアキン・コシーニャ/2021年/チリ/14分 © Diluvio & Globo Rojo Films, 2018
(シアター・イメージフォーラム ウェブサイトより)
<2023年11月12日 劇場鑑賞>
この、クレイアニメみたいな人形劇が、まさかワンシーン・ワンカットの映画だったなんて!等身大の人形って、すごすぎます。でも、実際の風景を使うわけでも、実在の俳優を使うわけでもないのに、世界各地の10か所で撮影する必要があったのですね。もはや素人にはわかりません(笑)。
話は、エリザベス・オルセンの「マーサ、あるいはマーシー・メイ」みたいなお話です。幸せになれると信じて入会した(少女なので2世かもしれないけれど)コミューンで、やっぱり上手くやれずに脱走する少女のお話。しかし、「マーサ・・・」は、まだ現実世界で生活している姉の元に身を寄せる、と言うすべがあったけど、それでもあれだけ苦しんだのに、たった一人で、幼い少女が逃げおおせた上に洗脳を解いてゆく、なんて現実的ではありません。苦しむだけです。幼い頃から、一定の価値観を強制されてきたわけですから。それが間違っているかどうかの問題ではなく、人は一人では生きてゆけないということです。
当然、少女マリアは彷徨います。家に入って助けを求めたように見えますが、それは幻覚かもしれません。事実、目の前に見える景色は、家の中・外界を問わず、どんどん変遷してゆき、マリアはますます混乱します。宗教的なコミューンは、得てして人里離れたところにあったりするので、走って脱走したくらいでは、まず人に出会いません。混乱しているうちにオオカミがやって来るとか、怖いことの方が多くなり、「戻った方がマシかも」となるのが関の山です。
と、わかり切った現実をおどろおどろしげな人形劇に仕上げて見せつけるのが、クリストバル・レオンとホアキン・コシーニャの二人組です。チリの人らしいです。しかし、すごい映像でした。私のような凡人には想像もできなかった世界。しかも、その過程すら展示して公開してしまうなんて、発想がすごすぎます。もしお会いできても、私なんかとは会話がかみ合わないでしょうね(笑)。
この二人が、ある場所で見つかった古いフィルムを修復したとして、本編の前に上映されるのが、短編「骨」です(写真2番目の右端に映っているモノクロの写真)。個人的には、こっちの方が怖かったかもです。
すべてが異形すぎたけれど、見れてよかったと思える作品でした。
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