夢を持たずに生きてきた不良青年と、彼の才能を見いだしピアニストに育てようとする2人の大人たちの物語を描くフランス製ヒューマンドラマ。パリ、北駅に置かれた1台のピアノ。マチューの楽しみは、自分を追う警察官の目を盗んでそのピアノを弾くことだった。そこへ通りかかった音楽学校のディレクター、ピエールはマチューの才能に強く惹かれ、ピアニストとして育て上げたいと声を掛ける。乗り気ではないマチューだったが、実刑を免れるため無償奉仕を命じられた音楽院で、ピエールや厳しいピアノ教師エリザベスの手ほどきを受けることに。生い立ちに恵まれず夢など持たずに生きてきたマチューは、周囲との格差や環境の壁に直面しながらも、本気で音楽と向き合うようになっていく。主演は「アスファルト」のジュール・ベンシェトリ。マチューを見守り導いていく2人の大人を「神々と男たち」のランベール・ウィルソンと「イングリッシュ・ペイシェント」のクリスティン・スコット・トーマスが演じる。(映画.comより)
王道の感動ストーリー。今、これを作るのって、却って勇気が必要だったんじゃないかと思うほどの王道サクセスストーリー。男の子は貧しく、音楽の才能すらあるのかどうかもわからないまま成長し、例に漏れず不良化してます。ただ小さい頃に、狭い団地ながらも、近所にピアノを弾くおじいさんがいて、一度メロディに引き込まれて入って行き、それ以来音楽に親しみ、教えてもらえた、という環境があっただけ。主人公の青年には幼い弟もいて、シングルマザーの母親は生活に一杯いっぱいで、「ピアノを弾いてる時間があったら働きなさい」という感じです。当たり前ですよね、母親が悪いわけではありません。
で、パリの駅には誰でも弾けるようにピアノが置いてあるんですね。日本でこういうところ、あります?私不勉強なんでよく知らないのですが、イ・ビョンホンの「それだけが、僕の世界」でもサヴァン症候群の弟が公園に置いてあるピアノを弾く場面がありましたね。誰でも・いつでも・無料で・ピアノが弾けるこういうところ、日本にもあるのでしょうか。そんなパリの駅でピアノを弾いていた青年は、行き詰まっていた高名な音楽教師の目に留まることとなり、繰り返される不良行為にほとほと困っていた母親に代わり身元引受人となった彼とともに、再生してゆくわけです。
この教師がランベール・ウィルソン、その友人の女性教師がクリスティン・スコット・トーマスです。クリスティンの一筋縄ではいかない女性教師がハマりすぎです(笑)。まぁ素行も育ちも悪い青年に、きちんとした音楽教育がそう簡単に施せるわけがありません。また、教師たちも皆それぞれいろんなバックグラウンドがあり、事情は複雑です。そんななか、観客の予想を裏切らない美しい物語が紡がれてゆきます。ありきたりと言うなかれ。人々が疲弊している現代において、安心して見られる美しい物語がどれほどの癒し効果を持つか。またすさんだ心が、鑑賞後にどれだけ洗われホッとしているか。映画がもたらす効果は決して侮れないと思いますね。また、ピアノ演奏がすごいんです。私は音楽の素養がなくて、クラシックなんかどれがショパンでどれがモーツアルトなのか、わかりません。それでも「すごい」としか形容できないような感動に襲われる、そんな演奏なんです。言語乏しくてすみません。でも、素人の私は、涙が出るほど感動しました。
ランベール・ウィルソンも、渋くて素敵なミドル(初老?)になりましたねぇ。もちろん元々ハンサムですけれど、歳を重ねて渋さを増し、何とも言えない”大人の男”の雰囲気を醸し出してますね。素敵です。
”娯楽な時間”にピッタリな映画です。その雰囲気を楽しみたいときに、是非。
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