田舎に住んでる映画ヲタク

「映画大好き」の女性です。一人で見ることも多いけれど、たくさんの映画ファンと意見交換できればいいなぁと思っています。

少年は残酷な弓を射る(we need to talk about kevin)

2012年07月22日 17時02分34秒 | 日記
 
 
 自由奔放に生きて来た作家のエヴァ(ティルダ・スウィントン)は、キャリアの途中で子供を授かった。ケヴィンと名付けられたその息子は、なぜか幼い頃から母親であるエヴァにだけ反抗を繰り返し、心を開こうとしない。やがてケヴィンは、美しく賢い、完璧な息子へと成長する。しかしその裏で、母への反抗心は少しも収まることはなかった。そして悪魔のような息子は、遂にエヴァの全てを破壊するような事件を起こすが・・・。



 この作品、いろいろ言われてたので心して見ました。しかし、心構えがすごすぎたのか、ちょっと拍子抜けしてしまいました。

なんか、物足りないんですね・・・。実際、私がよくわかってないだけかもしれないんですけど、母と息子の関係性が飛び飛びな描写で、いまひとつ充分ではないように思いました。

前もって”母を異常なほど憎んでいる息子”という知識を入れていなかったら、あんまり理解できなかったかも。

キャリアを諦めなければならなかった女性、という設定はよくあることですし、多かれ少なかれ女性は、子供を持つことで自分を犠牲にしなければなりません。

それでも、エヴァは一生懸命やってますし、おうち自体も裕福です。やりたいことを諦めたうえに貧乏する、なんて女性も多いことを思えば、充分恵まれていますし、エヴァも精一杯やっていたはずです。

なんでこんな物足りなさを感じるのかな、と思っていたら、どうも話がエヴァの視点でしか描かれていないからのようです。

難しいかもしれないけれど、もっとケヴィンの視点からも描かれていれば、印象は随分変わっていたはず。

つまり、母親に異常なほど反抗すると言っても、それはエヴァの視点でしかない、ということです。そこを観客に考えさせるように作ってあるのかもしれませんが、もっとケヴィンの意見が入れば。

あとからウェブなどで、ケヴィン(年長)役のエズラ・ミラーが、インタビューで「ケヴィンは鋭い洞察力の持ち主で、本心を隠して善き家族を演じようとする母親が我慢ならないんだ」と述べていますが、そこそこの歳ならいざ知らず、赤ん坊の頃からそんなこと、考えるでしょうか。

映画では、赤ん坊の頃からエヴァといるときだけ泣きやまなかったりするのですが、どうなんでしょう。私は物理的に無理があるように思いました。一日のほとんどを母親と過ごす赤ちゃんにとって、それほど泣き続けられるものでしょうか。もう、ダミアンだとしか思えません(笑)。

幼少期も父親にだけいい顔をする怖い子供、妻の言い分を取りあわない夫・・・なんだか既視感。「エスター」?「インシディアス」?

ともかく、妻がいくら訴えても却って妻を病気呼ばわりする夫、という設定もよくありますね。

と、本筋には関係ないところでいろいろ考えながら(笑)、でもこの息子は、意識していたかどうかは別問題にして、結局母が好きだったんじゃないだろうか、というのが私の意見です。





ここからネタバレ



 妹のペットは水道管に詰まらせるし(「危険な情事」を想起)、 あんなにかわいい歳の離れた妹を平気で傷つけるし(失明だなんて!)、最終的には父も妹も殺してしまう。

それなのに、母にはなんら手を下していない。

あれほど恐ろしい殺戮をしても、母は「ポリティカル・コレクト」に従い、きちんと面会に来てくれることを見透かしているだろうし、母は自分を見捨てないだろうと踏んでいるフシがあると思います。

しかし、私一人の個人的な感想を言わせてもらうと、ラストの抱擁・・・あれは、「もう来ない」を意味すると思いますね。最後と思って抱擁したんじゃないでしょうか。多分、母はこのまま街を離れて「子供離れ」をするんじゃないでしょうか。

もちろん、違うかもしれません。私個人の願望が入ってしまっているのかもしれません。

しかし、怖いことは本当に怖いです。だって、いくら母を憎んでいたとしても、こんなことすれば服役しなきゃいけないのは自分だし、そりゃ母も社会的制裁を受けるだろうけれど、一番人生を棒に振るのは自分。だから、なんでそこまでするのかは不可解ですね。

本当に嫌いなら、しゃべりたくもない、顔も見たくないはず。それなのに、いちいち母に反抗してきたケヴィン。それに、母をどん底に落とすことが目的なら、一番効果があるのは、ケヴィン、あなたの自殺ですよ。(ひどいこと言ってごめんなさい)

でも、自分と母だけ残った・・・。やっぱり私は、彼はお母さんが好きだった・・・と思いますね。
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