かりそめの旅

うるわしき 春をとどめるすべもなし 思えばかりそめの 旅と知るらむ――雲は流れ、季節は変わる。旅は過ぎゆく人生の一こま。

松井須磨子をご存じですか? 芝居「須磨子という名の正子」に関して

2010-11-09 20:08:20 | ドラマ/芝居
 カチューシャかわいや わかれのつらさ
 せめて淡雪 とけぬ間と
 神に願いを(ララ)かけましょうか

 誰もが一度は聴いたことがあると思うこの「カチューシャの唄」は、大正時代にレコード化され大ヒットした日本の流行歌(ポピュラーソング)である。
 もともとは、島村抱月の率いる芸術座によって帝国劇場で上演された芝居「復活」(トルストイ作)で歌われた劇中歌で、歌ったのは主役のカチューシャ役を演じていた松井須磨子。作詞は島村抱月と相馬御風、作曲は中山晋平。
 日本初の、歌う女優の誕生であった。
 島村抱月から曲を依頼された中山晋平にとっても、初めて世に出る作品であった。
 島村抱月は、この歌の大ヒットによって芝居の相乗効果を感じ、後に公演する舞台「その前夜」(ツルゲーネフ原作)では、「ゴンドラの唄」(吉井勇作詞、中山晋平作曲)を挿入歌として使った。この歌も大ヒットし、後世まで歌い継がれる。
 「いのち短し 恋せよ少女(おとめ)……」で有名な「ゴンドラの唄」は、黒澤明監督の映画「生きる」で、志村喬がブランコに乗りながら哀しげに歌ったのが印象的だ。

 松井須磨子は、坪内逍遥の文芸協会演劇研究所第1期生である。「人形の家」(イプセン原作)の主人公ノラを演じて、一躍認められた。
 そして、この「カチューシャの唄」で人気女優となった松井須磨子だが、さらに彼女を伝説の女優にしているのは、劇団を主催していた島村抱月と不倫関係であったといわれていることである。恋多き彼女は、それまで二度離婚していて、島村は妻帯者であった。
 島村が病死した2か月後、須磨子は後追い自殺した。享年32歳であった。

 *

 この松井須磨子をテーマにした芝居が、東京で公演される。
 「須磨子という名の正子」~女優・松井須磨子の光と影~(作・演出ふじたあさや)で、演じるのは名古屋の総合劇集団俳優館で活動している後藤好子。
 彼女のひとり芝居である。
 内容は、住み込みの女中・正子の目を通して、松井須磨子を浮き彫りにするという趣向である。

 平成22年度(第65回)文化庁芸術祭参加公演
 後藤好子ひとり芝居
 「須磨子という名の正子」
 日時:11月10日(水)、午後1時30分、午後7時~
 会場:「座・高円寺2」(杉並区高円寺2-1-2、高円寺北口5分) Tel(03)3223-7500
 
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