写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

夏は来ぬ

2010年07月20日 | 季節・自然・植物
 18日、激しいゲリラ雨が甚大な被害を引き起こした長い梅雨が明けた。やっと「夏が来た」と思ったら、翌日からは一転して今度は猛暑。最近の気象変化の激しさに、老体はついていけない。
 夏の来方も、昔は穏やかな季節感あふれる景色の中からやってきたことが、歌の文句を見てよく分る。
 
 ♪ 卯(う)の花の 匂う垣根に ホトトギス早も来鳴きて 忍音もらす 夏は来ぬ ♪
 1番のこの歌詞に続いて、次は「早乙女が 裳裾(もすそ)ぬらして 玉苗植うる 夏は来ぬ」「窓近く 蛍飛びかい おこたり諌(いさ)むる 夏は来ぬ」「くいな声して 夕月すずしき 夏は来ぬ」
 
 今は失われた風情を、エアコンを効かせた部屋で懐かしんでいるとき、高校野球の応援に行こうという誘いを受けた。この夏は今一つ評判の芳しくない母校・岩国高校ではあるが「そうだ。こんな時にこそ応援に行ってみよう」と思い出かけることにした。
 柳井球場での第1回戦、相手は下松高校。お互いが、きびきびしたテンポのいい試合を展開したが、7回、岩国高校の打線が火を吹き大量5点を加点し、7対0でコールド勝ちをした。
 試合が終わると、校歌斉唱、両校応援団のエールの交換。試合中センターからずっと吹いていた風と、持って行った氷水2本のおかげで熱中症にもならず、若人から活力をもらって退場した。
 毎年「暑いから今年はもう行くまい」と思いながらも出かけている。知り合いの子でも親戚でもない子がプレイする高校野球だが、倒れそうなくらい暑いスタンドは、たとえ無風の日でも、爽やかな風を感じることが出来る不思議な空間だからであろう。
 全国高校野球大会が始まり、新聞のスポーツ欄がにぎわい始めたときが、私にとっての「夏は来ぬ」である。
  (写真は、第1回戦に勝った「岩国高校」)