写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

邸宅美術館3

2010年07月10日 | エッセイ・本・映画・音楽・絵画
 歌の文句じゃないが、あれは3年前、ヨーロッパ旅行の最後の2日間、パリに滞在したときルーブル美術館へ行った。あわただしい時間の中、人ごみにもまれながら「モナリザ」と「ミロのヴィーナス」を拝んだ。
 美術館からは西北西にまっすぐ道が伸びていて、1キロ先にはコンコルド広場、2キロ先からはシャンゼリゼ通りが伸び、その先には凱旋門がどっしりと構えている。
 一方、美術館の南側といえば、セーヌ川がゆったりとした流れを見せている。観光船が行き交う。この辺りには、短いところで200m、長くても400mごとに橋がかかっている。パリの町は、川幅がわずか120m~130mのセーヌ川にかかる橋でいっぱいである。
 そんな風景を記憶にとどめているとき、同級生の女流画伯・坂井幸子さんから電話があった。「そろそろ絵を替えてあげましょうか」という。今まで展覧会で高い評価を得たものを2点、我が家のリビングルームに飾らせてもらった。3つ目の作品と入れ替えてくれるという。
 いつか美術展で見た「古都」と題した作品で、ルーブル美術館からセーヌ川に架かる橋とその向こうの町を描いたものである。
 早速入れ替えをお願いした。持ち込まれた絵の大きさを見てびっくりした。リビングルームの壁一面を占めるほどの大きさだ。測ってみると横1.7m、縦が1.2mもある。飾った後、正面に座ってじっくりと眺めてみた。パリジャン、パリジェンヌが忙しそうに橋を渡っている。町の活気が、各人の活き活きとした動きから感じとることができる。
 12月、クリスマスに近い風景を描いたという。マフラー姿が多い。眺めていると、オペラ座の前のオープンカフェで、ちょっと気取って飲んだカフェオーレの香りを思い出した。
 我が家は邸宅とは程遠いにもかかわらず、邸宅美術館と銘打っている。この絵を見たい方はどうぞご来場ください。おいしいコーヒーを一緒に飲みながら鑑賞してみませんか。
   (写真は、壁いっぱいの絵画「古都」)