写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

しろうお

2009年03月24日 | 季節・自然・植物
 2月初旬、今津川のシロウオ漁が解禁されたことはテレビや新聞で知っていた。毎年1度は奥さんが「早春の味」と言って買ってきてくれる。

 今年はどこにも売っていないという。漁獲量が毎年落ちているとは聞いているが、店頭に出ないほど落ち込んでいるのかと思って諦めていた。

 そんな今日、お昼の買出しに出かけて行った奥さんが「いい物があったわよ」と、膨らんだ透明なポリ袋をテーブルの上に置いた。

 「早春を告げる白魚(シロウオ) 風流人 早春の詩情たずねるおどり喰い」「味のふるさと宅急便」「創業天保9年 川魚の飴源」と書かれている。

 佐賀県の唐津市から送られてきた商品だ。夜店ですくった金魚を入れた袋のように、水の中でシロウオが泳ぎ空気で膨らませてシールしてある。

 何匹入っているか数えてみるも、元気に泳ぎ回っているので数えられない。ざっと見て100匹というところか。

 値札を見ると980円。1匹が10円だ。1昨年だったか、買ってきたシロウオを計算したことがあった。1匹が5円だったと記憶している。値段を見ただけで漁獲量が減ってきていることが分かる。

 ネットで調べてみると佐賀のシロウオは、唐津湾から玉島川を上ってくる。それを、「やな掛け」という方法で捕獲する。よしずと竹ざさを組んだ板状の2枚をV字型に組み、幅が狭くなる部分にかごを取り付けて獲る漁法のようだ。

 四手網漁法の本場である岩国に、やな掛け漁法が殴り込みを掛けてきたという状況である。今年は岩国では獲れなかったのだろうか。残念だが仕方ない。

 いつもは簡単な昼食が、今日はシロウオの吸い物。そうくれば何かが飲みたくなる。お昼から小さな缶ビールを開けてみた。

 早春の味がすうーと喉を通り過ぎていったが、先ほどまで元気一杯だった命を頂いたという後ろめたさからか、心には少し引っかかったように感じた。
 (写真は、今年初めて見た「シロウオ」)