写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

平家山

2005年10月29日 | スポーツ・山登り・釣り・遊び
 私が卒業した中学校の裏に、平家山と呼ぶ山がある。標高は150mで高い山ではないが、国道のある南側から見ると、左右対称のきれいな形をしている。

 平家山というだけあって、由緒ある山らしい。手持ちの昭和35年初版の「岩国郷土誌稿」を紐解いてみた。岩国のことなら何でも載っている。

 「平家ヶ嶽といい、平家西国落ちの際、少時陣営を構えた処であるが、山容奇秀、殊に巌崖巨石を以って積み重ねられ、その間に松樹を以ってし、誠に奇観である」と書いてある。

 子供の頃、水晶山と呼んでいて、友達と連れ立って水晶を取りに行っていた。半日探して、小さな欠けた水晶を2、3個掘り出したことがある。

 中学卒業以来、登ったことはなかった。退職で帰郷してから、数度登ってみた。登山ルートは4、5コースある。

 先日久しぶりに、自宅裏から登るコースを選んで登ってみた。初めは急な登りが続くが、登山道はちゃんと整備されている。

 7合目あたりに、シャラの群生地がある。花が咲く時期に来てみたいと思いながら暑い季節なので、今もってまだ咲き乱れる白い花を見たことはない。

 40分で山頂に着く。そこには、郷土誌にある通りの巨石がある。人力で積み重ねたとは思えない。不思議な景観ではある。

 岩の上に立つと、ここからの展望は良い。岩国駅前・麻里布・室の木・川下地区が一望できる。長い滑走路を持つ米軍基地も、上から丸見えだ。

 眼下の岩徳線には、模型のようなディーゼルカーが1両ゆっくりと走る。半世紀前、友と見た景色とは、似ても似つかない光景が広がっている。

 谷を隔てた対面には、源氏ヶ嶽という山があるという。どの山がそれなのか分からない。厳島を始め、この地方には平家・源氏にまつわる地名は多い。

 幼い頃、友と遊んだ思い出の山が、今も直ぐ傍にある。岩国を離れ遠くで頑張っている友に、変わらぬ故郷の山を見てもらいたくて撮ってみた。
   (写真は、ロードスターと夕焼けの「平家山」)