俺の明日はどっちだ

50歳を迎えてなお、クルマ、映画、小説、コンサート、酒、興味は尽きない。そんな日常をほぼ日替わりで描写

「サン・ジャックへの道」 SAINT-JACQUES... LA MECQUE

2007年08月29日 23時17分58秒 | 時系列でご覧ください
ちょっとコミカルタッチな予告編を見る限りでは、仲の悪い兄弟たちがともに旅することによって互いを理解していくという家族再生物語程度にしか思っていなかったのだけど、ところがところが、実際に観てみるとそれだけではなくそれ以上に大きく広がりを見せてくれる、何とも愛すべきとてもとてもキュートでハートウォーミングな仕上がりに、すっかり心奪われてしまった「ロード・ウォーキング・ムーヴィー(笑)」。

とにかく、登場人物それぞれが、それこそどこにでもいそうな連中ながら、何とも魅力的。
母親の遺産目当てで不承不承巡礼の旅に出る仲の悪い兄姉弟ピエール、クララ、クロード。
誕生日にプレゼントされた単なる山歩きツアーのつもりで参加する女子高生コンビ。
そんな女の子に近づく為、下心いっぱいで参加するアラブ系少年サイードと少々お頭の弱い文盲のラムジィ。
病気がきっかけでどこか訳ありで単身参加する女性マチルド。
そして家族を遠くに残してそんな彼らを2ヶ月にわたって引率するガイドのギィ…。



そんな最初はばらばらな9人がフランスからスペインまでの聖地巡りの過程で、ときに衝突し、ときに喧嘩し、ときにいじけ、時には「旅は道連れ」とばかり助け合ううちに、旅の半分で帰ることが出来たはずの仲ワル3兄姉弟すらもっと旅を続けたくなるほどやがて離れがたい家族のようにまとまっていくその姿が何とも素敵だった。

途中、携帯電話に集約される文明批判や民族差別からの教会批判といったシニカルな批評精神も突出することなくきわめて自然な流れの中にあったのもさすが。
そして旅のはじめに具体的なリュックやバックパックだけでなく大きな精神的な荷物を抱えていた参加者それぞれが旅を続けることによって自らを見つめなおし、雄大な自然の中、新たな生き方を確かめようとする彼らの姿に対して、その優しさに包まれた視線にも感動。



加えてせっかく文字を覚えたのに母親を亡くしてしまうラムジィの無邪気な姿もそうだったけれど、そのあと最初は強面ながらどんどん優しくなっていく教師クララが最後に用意してくれていたサプライズには思わず涙。

とにかくこの夏(というか全国公開は春だったんだけど)観た映画の中では最も心揺さぶってくれた大好きな作品。
劇場で無理なら、近く発売されるDVDででも是非。かなり、かなり、かなりおすすめであります。



ちなみに原題に含まれている「 La Mecque 」とはラムジィが勘違いしていたイスラム教最大の聖地「メッカ」のことのようで、モンテ・ゴソの丘の上のモニュメントに上って「アラー、アクバル!」と言わせてしまうのもある意味凄いなと感心させられてしまったのでした。


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2 コメント

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ありがとうございます (kossy)
2007-09-09 12:01:10
早速コメントいただきまして、ありがとうございます!
「この夏最も心揺さぶられた」に同意です。
劇中の9人と同じく、まったく気にならなかった作品なのに運命的に出会えた映画でした。
スペインの海でホロリとさせられた後にサプライズがやってくるんですもんね・・・涙腺波状攻撃に見事にやられちゃいました(笑)
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感動 (kimion20002000)
2008-01-27 18:21:10
TBありがとう。
押し付けるような感動じゃないんですね。
ほんのりと、共感できるし、映画を見ながら、自分も旅をともにしているような気になりました。
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