東京12R ジャパンC
◎2.アーモンドアイ
○6.コントレイル
▲5.デアリングタクト
△15.グローリーヴェイズ
×8.ウェイトゥパリス
アーモンドアイは「3/4ノーザンダンサークロス」かつトライマイベスト≒ロッタレースの3/4同血クロス。コントレイルはPOGでイチオシしたように、母ロードクロサイトの配合(アンブライドルド≒ジーノ2×3など)がとにかく素晴らしい。デアリングタクトもエピファ産駒は母父キングカメハメハでサンデーのクロスが成功するだろうと予測してきた。3強は配合も満点だから、いろいろ考えてみてもそこで印を決めるのは難しい。
東京コースが合うのはアーモンドとコントレイル、2400が一番合うのはデアリングか。ピッチのデアリングはスローのほうが勝ち目はあるかもしれないが、田辺と勝浦がつくるペースも読めないし誰がどこでレースを動かすのかも読めない。
いずれにしても、この名馬3頭が一生に一度だけ相まみえるのだから、変なレースにはならないだろうと信じたい。3頭とも全てを出し切って、それでもゴールまで叩き合いはつづくだろう。東京の直線で全てを出し尽くした後に、最後に信用できるのは何かと考えたらハイペリオンだ。古馬のハイペリオンだ。ヌレイエフ5×3のアーモンドに◎を打ちたい(ヌレイエフはハイペリオン4×4)。
2歳時から圧勝完勝を重ねてきた天才少女は、5歳秋の引退レースにおいて初めて必死で走るだろう。天才オバチャンが歯を食いしばり髪を振り乱して、最後の一滴までハイペリオンを絞り出して、若い力にギリギリ勝つところを見たい。
ウェイトゥパリスはナスペリオン的な斬れはある走りなので追走できれば。あとは追い切りの動きがちょっと不満だが、メジロ牝系のディープ産駒で今が全盛期のグローリーヴェイズ。
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例によってNETKEIBAの全頭血統解説より
アーモンドアイ
母フサイチパンドラはエリザベス女王杯の勝ち馬で、3代母Sex AppealはEl Gran Senorやトライマイベストを産んだ名繁殖。本馬はトライマイベスト≒ロッタレースの3/4同血クロス5×2を持ち、父のしなやかさと母の強靭さを足して割ったような体質が絶妙だ。今は1800ぐらいが最適距離で、レコ勝ちした18年ほどの高速馬場ではないのが2400だと少し気にかかる。天才アスリートの渾身のラストランに注目。(距離○スピード◎底力◎コース◎)
コントレイル
母母Folkloreは北米2歳女王。母系にUnbridled's SongとStorm Catが入り、母はUnbridled≒jeano2×3とIncantation4×5。まさにド真ん中のディープ黄金配合だ。ダノンキングリーなどと似たタイプだが、こちらのほうが強靭で3歳時の完成度も高い。ひと夏越して更にエンジンやアクションが良くなり、菊は距離適性の差で苦戦したが能力でねじ伏せた。もちろん東京2400のほうがケイバはしやすい。(距離○スピード◎底力◎コース◎)
デアリングタクト
母母デアリングハートはEcton Parkやピットファイターのきょうだいで、府中牝馬Sに勝ちNHKマイル2着。エピファネイア×キングカメハメハ×サンデーサイレンスはスカイグルーヴと同じで成功率が高い。エピファ産駒らしい伸びのある体型だが、母母がDanzig的なマイラーだから後駆は強靭。Tom Foolル的脚捌きなのでパワーや機動力や自在味も兼備していて、どこでも同じぐらい強いオールラウンドな女傑だ。(距離○スピード○底力◎コース◎)
スタートが決まったキセキがヨシオを制してハナに立つと、そこからペースを上げて後続を離し、2000m通過が秋天よりも速い1.57.5(57.9-59.6)ですからキセキ自身はさすがにオーバーペース
大トビでワンペースで13秒台で抜いて走るのも10秒台に急加速するのも苦手で、11.7ぐらいでずっと走りつづけられるのが持ち味で、そんなキセキが緩めず逃げつづけたことで、3強が1~3着を占め4人気と5人気が5着と4着、ワールドプレミアも何とか間に合ったという出来ながら6着まで追い上げており、強い馬が強いレースをして上位を占めることとなりました
アーモンドはスタートは一番速く好位のイン、4角までは荒れた内目を走ることになりましたが、いつも書くようにSex AppealやNureyevのパワーもすごい馬なので、けっこう馬場が悪かったシンザン記念でも豪脚を爆発させていたし、ルメールはあそこ走らせても大丈夫だろうという頭はあったと思いますね
それにしてもこのペースをうなるような手応えで追走し、直線半ばで悠然と先頭に立ち、あああやっぱり強い、高速巡行の追走力は世界一やと震えるような完勝でしたが、パトロールを見るとゴール前では珍しくヨレていて、祐一も松山もゴール前は苦しかったとコメントしていますが、アーモンドもやっぱり最後は苦しかったんですね
ゴール前の後続を寄せつけない重厚なフォームを見ると、可憐な天才少女というよりもしぶといオバチャンで、みんな苦しかった激闘において、最後の最後に天才少女はHyperionオバチャンと化し、最強を証明してターフを去っていきました
アーモンドの配合については前エントリで改めてあれこれ書いていますが、Northern Dancerのオールラウンドさ、サンデーサイレンスのしなやかさ、Sex Appealの強靭なパワー、Somethingroyalのナスキロ柔さ、そしてNureyev5×3がもたらしたであろうHyperion的な成長力と粘着力
見れば見るほど美しく精緻な血統表で、その美点が全て体現されていた歴史的名牝でした
デアリングタクト松山はアーモンドの後ろを取りにいって、これを射程圏に進み直線は外に持ち出して追い出したものの、コントレイルがビュンと加速したときにヨレたので内に押し込められる形に
ちょうどアーモンドが前にいたので進路はあったんですが、そこで左手前になってモタれてしまったし、一番スピードに乗るべきところで真っすぐ走れなかったロスはあったでしょう
Tom Fool走法のオールラウンダーで「胴長アパパネ」と評してきましたが、3強のなかでも2400のスタミナなら最右翼というゴール前の脚色でした
コントレイルは菊力走の反動や疲れは確実にあったようで、最終追い切り後に矢作先生や祐一がついに復調したと笑顔でコメントしていて、当日のパドックも研ぎ澄まされたいつものコントレイルの体つきやったと思います
レースはアーモンドとデアリングを前にみながらいつでも外に持ち出せるポジションで、満を持して追い出しましたがゴール前は前と同じ脚色、でも追い出したときにビュンと加速したときはまた鳥肌が立ったし、あの“ビュン”はこのメンバーに入っても際立ってました
カレンブーケドールがあそこまでしぶとく食い下がったのも持続力を問われた証やと思いますが、グローリーヴェイズは直線で右手前に替えたあとすぐに左手前に戻してしまい、そのタイミングで川田の右ムチがうなったので内に大きく切れ込むこととなり、馬場の悪いところを走ることになったのが惜しかったですね
新供用種牡馬も概ね出揃い、来年の種付に関するお仕事がポツポツ舞い込んでくる時期になり、「この牝馬は短距離で活躍したからミッキーアイルあたりどうかね?」とか「芝中距離で走った馬なのでクラシックタイプの種で」ってな提案がよくあるんですが、「短距離の肌に中距離の種を配して、それでどっちに転んでもわりと上手いこといくもんですよ」「スタミナのある繁殖にこそマイラーの種を配して、父のスピードを2000で爆発させるのが本来王道なんですよ」ってな話もするんですよね
結果的に発現の仕方としてマイラーに寄ったりステイヤーに寄ったりはあるものの、サラブレッドの競走は2000のスピードとスタミナこそが根幹であり、血統も配合も2000を幹として考えるべきだというのが笠理論の一つ
コントレイル(ディープインパクト×Unbridled's Song)もデアリングタクト(エピファネイア×キングカメハメハ)も父と母父は中距離ですが、母母は北米2歳女王とNHKマイル2着のマイラーです
芝2200のエリザベス女王杯勝ち馬で、少し鈍重ですがパワーとスタミナを誇ったフサイチパンドラに、短距離~マイルで世界の頂点を極めたロードカナロアを配し、2000前後のオールラウンドなスピードを誇る歴史的名牝が生まれたというのは、配合史的にみても全くもって順当といえるのです
「どう見ても世界一の芝レースや」と石塚さんと言ってたんですが、それを演出した全ての馬と関係者に、惜しみない拍手と労いの言葉をかけて終わりにしたいと思います
これが底力ってやつですか?
一つ言えるのは、Hyperion的な頑張りというのは、許容範囲を超えて苦しくなってからの頑張りがすごいんですよね
もがいてからが真骨頂というか
「芝2400mの〜」→「芝2200mの〜」
ではないでしょうか?ご確認ください!