栗山求/望田潤監修「パーフェクト種牡馬辞典2024-2025」

第67回有馬記念回顧~有馬もディープインパクトのように

2022-12-26 02:31:37 | 血統予想

中山11R有馬記念
◎13.タイトルホルダー
○9.イクイノックス
▲3.ボルドグフーシュ
△7.エフフォーリア
×16.ディープボンド
「早めスパートでロンスパ戦にしないと、イクイノックスに差されてしまう」タイトルホルダー陣営はこう発言している。さすがに宝塚ほど前半から緩みなく流れることはないだろうが、後半1000mは速いレースになるだろう。有馬は緩みないペースやロンスパ戦になると、地力やスタミナが問われるのでわりと堅くおさまるし、ヒモ穴になるのもサラキア、ワールドプレミア、シュヴァルグランといった長いところ向きの馬だ。変な荒れ方をするのはだいたいスローになったときで、クイーンズリングやトゥザワールドが2000ぐらいの器用な脚で立ち回ったときで、今年はそういう馬はこないだろうと読む。
イクイノックスは母父キングヘイローでヘイロー4×4だから、中山内回りにも対応できるタイプだとは思う。しかしキタサンブラックというよりもディープインパクトの産駒と形容すべきしなやかな体質はサーアイヴァー≒ドローンとワードン≒ルファビュリューのニアリークロス由来で、やはりベストパフォーマンスを出せるのは東京だろう。フィエールマン、サートゥルナーリア、シュヴァルグラン、ルーラーシップ、ブエナビスタといった東京や外回りのチャンピオンクラスが、中山内回りにも対応して強い内容の2着3着を積み上げてきた歴史を紐解いてみても(ああそうだエアグルーヴもとても強い3着だった)、ハイペリオンの塊のような歴史的名馬タイトルホルダーをここでイクイノックスが差し切ってしまうのかとなると、必ず差してくるだろうがやっぱりとても強い2着3着だろう、というのが今年の結論。
エフフォーリアは当日どんな体つきで出てくるのか興味津々だが、後半1000m12秒0を刻みつづけるようなタイトルホルダーのゾーンのレースを、外々を回してストライドで捲り差すというのは適性としては合っている。内回りのコーナーで11秒台の急加速を要求されるのが一番辛い。
ディープボンドは出来は昨年以上で、昨年2着を見てのとおりダラッと捲る脚質も有馬向きで、それだけに大外枠はアンラッキーとしか言いようがない。ただ差しにも回れる馬だし、いつもタイトルホルダーとガップリ四つのケイバになるが、変化球を投げやすい状況になったともいえる。川田がどう乗ってくるかも興味津々。
ロンスパ戦なら菊花賞組のスタミナも侮れないが、ヌレイエフ的な野太いストライドで豪快なアクションのジャスティンパレスよりも、燃費の良いフォームでトボトボジワジワ地道に差してくるボルドグフーシュのほうをとってみた。福永祐一の有馬ラストランにも興味津々。

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月曜夜は牧場関係の忘年会があり、それまでにNETKEIBAの年末進行の原稿を書き上げなければならず、競馬が終わってからも仕事してたので回顧も早いのです(・∀・)バババッと書いたので内容はちょっと荒いです

まずはNETKEIBAの全頭解説から、導入文と1~3着の解説を

近5年の有馬記念において4人気以下が馬券に絡んだケースは4例あり、Danzigの血を引く牝(サラキアとクイーンズリング)、長距離G1で連対のある牡(ディープボンドとワールドプレミア)、この2パターンに大別できる。登録馬のなかでDanzigの血を引く牝はジェラルディーナ(Danzig5×4)だけ。長距離G1で連対のある牡馬はアリストテレス(菊2着)、タイトルホルダー(春天と菊1着)、ディープボンド(春天2着2回)、ボルドグフーシュ(菊2着)。

イクイノックス
ヴァイスメテオールやミスビアンカの半弟で、スタッドリーのイトコ。母シャトーブランシュはマーメイドS勝ち馬。父キタサンブラックは年度代表馬でガイアフォースやラヴェルなどの父。見た目はわりと父似で、この牝系らしいナスペリオン的な強靭かつ持続力あるストライドは東京向きで、秋天やダービーの斬れ味は秀逸だった。舞台が中山内回りに替わってどうかだが、Halo4×4で皐月賞はうなりながら2着だから、大きな減点は要らないか。(距離◎スピード○底力◎コース○)



ボルドグフーシュ
母ボルドグザグはレゼルヴワール賞(仏G3・芝1600m)勝ち馬で、さかのぼるとイクイノックスやベリファなどと同牝系。母父LaymanはソヴリンS(英G3・芝8F)などに勝ったサンデーサイレンス産駒。そこにモーリスやゴールドアクターを出したスクリーンヒーローが配された。母方のHerbagerなどのスタミナを感じさせる無駄肉のない体質と、父譲りのTom Fool的ヒタヒタ走りで、思った以上に長距離適性が高い。ここも菊のような立ち回りは可能。(距離◎スピード○底力○コース◎)



ジェラルディーナ
モアナアネラの半妹で、ドナウブルーやドナアトラエンテやスレイマンの姪で、ドナウデルタのイトコ。母ジェンティルドンナはG1を勝ちまくった名牝でロジャーバローズも近親。サンデーサイレンス、Lyphard、Danzigなどをクロスする父母相似配合で、父母譲りのパワーと機動力で走りそうだが、体質はわりとディープっぽくてしなやかストライド。このやや玉虫色な脚質が、外伸び馬場の阪神内2200に絶妙にフィットしたエリ女の捲り差しだった。(距離○スピード○底力◎コース○)



予想どおり気合いをつけてタイトルホルダーがハナに立つも、中盤が13.1-12.7と中だるみ気味で、そこでイクイノックスが行きたがってルメールがなだめるほどで、緩みないペースでビュンビュン行けなかったのは出来が100%ではなかったのか、それが遠征後の調整の難しさなのか

思えば2歳のホープフルや3歳の有馬も食い足りない内容だったし、敗因はそれぞれあげられるにせよ、Hyperion的に締まりの強い体質だしNever Bend的な立ち肩だし、そもそも冬場はあんまり良くないタイプなのかもですね

エフフォーリアは金曜にも速いところをやって、何とか絞りたいという陣営の思惑が伝わってきましたが、太いというほどではないけれどちょっと馬が良すぎるかなという体つきではありました

それよりもタイトルの逃げが意外に緩くて、上がり3Fが12.2-11.4-12.3とわりと速くなり(ちなみに昨年は12.2-12.0-12.5)、この馬も本質的には大箱向きなので、鋭角なコーナーで11.4という加速を要求されるとやっぱり置かれ気味になって手が動いてしまう

ジェラルディーナは母ジェンティルドンナのような小脚のきいた加速ではないので、戦績ほど内回り向きの脚質ではないと書いてきましたが、エリ女も有馬もインが悪い外差し馬場になったのが奏功し、外々を回しながらストライドロス少なく差せたのが大きかったかと…ジェンティルほどDanzigっぽい馬じゃないですよね

ボルドグフーシュはとにかく無駄肉がないという体つきで出てきて、アクションも地味で燃費がいい走りをする馬で、これで2400m以上は[1-2-0-0](ゆきやなぎ1着、菊2着、有馬2着)ですから堂々のステイヤーというべき戦績に

インが荒れているとみてみごとな大外捲りを決めた福永祐一もさすがで、インを走ったタイトルホルダー、ジャスティンパレス、ブレークアップがみんな伸びあぐんだだけに、枠ナリにイン差し狙いでいったらイズジョーノキセキのように捌くのに苦労したでしょう(だからイズジョーノキセキも強い内容の4着)

キタサンブラック産駒というよりはディープインパクト産駒のようなイクイノックスは、中山内回りで東京と同じぐらい強いとは思えなかったのですが、まるでディープインパクトのように内回りを捲って直線ではストライドで爆発して、タイトルホルダーが沈んでしまっては他に敵はいなかったという圧勝でした

誰もが絶賛するほどのデビュー以来最高の出来でパドックに出てきましたが、それだけまだ伸びしろがあったということで、体つきなんかは今でも薄く映るし、それもまたディープインパクトっぽいところなんですよね

けっきょく距離が延びたらもっと強かったし、祐一の話によるとゴール後に引っかかっていたほど余力があったようで、そういうスタミナこそが実はイクイノックスの一番すごいところかもしれない、そう思わせるところもディープインパクトなんですよね

一口好配合ピックで私も栗山さんもピックした馬で、配合についてはデビュー当時からずっとほめてきましたが、もう一度要点をまとめておくと

・キタサンブラックは重厚な中長距離馬なので、母や母父がスプリンター~マイラーのほうが成功しやすいし早期に完成しやすい

・ブラックタイドは全弟ディープインパクトのようなHalo≒Sir Ivor的なしなやかな斬れ味は伝えず、そのため産駒は先行型が大成し、キタサンブラックも先行脚質のチャンピオンだった。しかし産駒の代ではSir Ivorのクロスやニアリークロスが成功しており、ブラックタイド~キタサンブラックと受け継がれてきた先行粘着体質を、ディープ的斬れ体質に振ることで成功しているといえる(下記エントリ参照)
https://blog.goo.ne.jp/nas-quillo/e/0bdeb73fb042cfc8dc8c244ae64cbdbc

・キタサンブラックのすごい底力はBustedとTulyarとWorden間に生じるニアリークロスである程度説明できるが、イクイノックスの場合はそこをWorden≒Le Fabuleuxのニアリークロスで受け継いでいるのが秀逸(下記エントリ参照)
https://blog.goo.ne.jp/nas-quillo/e/369ba708674e5d2a9924a042f049b705





ちなみに、Worden≒Le Fabuleuxのニアリークロスをもつキタサンブラック産駒は、上のように3歳に限れば、また牡に限れば、出走全馬が勝ち馬となっています

このなかでシルクHCのイクイノックスとブラックブロッサムをピックしたのは、母父がマイラーであることと、Halo≒Sir Ivorのクロスをもつことに加え、Worden≒Le Fabuleuxのクロスをもつこともポイントだったのです

あとこのデータからも一目瞭然ですが、ブラックタイド~キタサンブラックのラインはディープインパクトとは対照的にコルトサイアーですよね

コメント (5)
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