栗山求/望田潤監修「パーフェクト種牡馬辞典2024-2025」

第44回エリザベス女王杯回顧~完ぺきに下ったが

2019-11-11 11:25:16 | 血統予想

京都11R エリザベス女王杯
◎6.クロコスミア
○8.クロノジェネシス
▲17.サラキア
△11.ラヴズオンリーユー
×14.ゴージャスランチ
注4.ウラヌスチャーム
オークスから+20キロの素晴らしい体で出てきたクロノジェネシスは、横綱相撲でねじ伏せるような完勝で秋華賞を制し、今ならラヴズオンリーユーよりモノが上かもしれない。しかしクロコスミアも重厚な欧州牝系のステイゴールド産駒だけに、398キロでデビューしたのが今や440キロ台に達し、すっかり牝馬路線の上位常連に定着した。
プリンスリーギフトとボールドルーラーとブラッシンググルームを引くので前駆のいい走りで、毎年エリ女ではうなりながら3角から下ってきて直線半ばでは後続を突き放して、これは勝ったかと毎年思わされる。春のヴィクトリアマイルでもゴール前でジワジワ3着に盛り返したが、あれも東京の直線の上り部分よりも平坦部分での加速で巻き返しているのだ。
エリ女はリピート好走が多いレースで、去年も負けたとはいえリスグラシューとクビ差。あれからもうワンランク、いや半ランクでいいから成長していれば、三度目の正直があってもいいだろう。ナシュワンの成長力に◎○を打ちたいエリザベス女王杯なのであった。

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「18年が上がり12.0-11.6-11.4-11.7、17年が12.2-11.6-11.2-11.6、16年が11.9-11.5-11.2-11.4、14年が12.2-11.5-11.3-11.3。手の内を知り尽くした牝馬たちの戦いで、ペースや隊列は落ち着き上がり3Fのケイバになりがち」これはNETKEIBAの血統解説の冒頭部分

今年は前半1000mが63秒ぐらいの超スローで、後半1000mが12.3-11.6-11.5-11.4-11.7

Princely GiftとBlushing GroomとBold Rulerから前駆のいい走法を受け継いだクロコスミアは、残り800mの下りからスパートしてラヴズオンリーユー以下を引き離しにかかり、そこでマージンとって流れ込むというここ3年のなかでも最高のレース運びやったんですが、それでもやっぱり今年も2着でした

さっさん会期待の若手で有名国立大学馬術部に所属するハシモトくんは、決して悪い奴じゃないんですがちょっと変わってて空気が読めないところがあって、「僕も◎クロコスミアでしたが、やっぱり最後はCapoteの限界ですかね…」

いやお前、その気持ちは痛いほどわかるけど、このレース直後にそんなこと言うなよと…今それ言ったらクロコスミアがあまりにも不憫やないか

「クラシックタイプじゃないというか、スピードが軽薄すぎて、芝中距離大レースで◎を打ちにくい血ってあるやんか。ヘクタープロテクターとかボストンハーバーとか、Mr.GreeleyとかFusaichi Pegasusとか」みたいな話は当ブログでもよくしますよね

そういう私の血統観からいうと、ヴィクトリアマイルやエリザベス女王杯でクロコスミアに◎を打っちゃいかんのですが、でもこんなに逞しく成長し素晴らしい競走馬に完成したのを目の当たりにすると、「ステイゴールドとNashwanならば、Doronic≒Bustedならば、ボストンハーバーを克服できるかもしれないのだ」と自分自身にも言い聞かせたくなる



母父ボストンハーバーやからフワリと先行できるわけで、ボストンハーバーやから下るのが上手いという言い方もできるんですが、3年連続2着という悔しい結末もやっぱりボストンハーバーの血の宿命かもしれないというね、血統屋のレース回顧としてはそう言うしかなくて、でもクロコスミアのことが好きすぎてそんなこと言いたくないです…

コメント欄にも書いたように、パドックではクロコスミアとスカーレットカラーがグンバツで、スカーレットカラーには思わず△を追加したほどで、ただしあのパンパンに張りつめた馬体は「母方のDistant Relativeのマイラーっぽさも感じられる」(血統解説)ものでもあります

クロノジェネシスはやっぱりバゴ産駒ですから、バゴ産駒らしく完成した今ならなおさら、全馬が33秒前後で上がるようなレースよりは、秋華賞のようにゴール前が12秒台の持続戦粘着戦のほうがパフォーマンスは上がるんでしょうね

例によって1~3着馬については、NETKEIBAの重賞出走予定馬血統解説より再掲します

ラッキーライラック
母ライラックスアンドレースはアシュランドS(米G1・AF8.5F)勝ち。母父Flower Alley(トラヴァーズS)はトーセンラーやスピルバーグの半兄でアイルハヴアナザーの父。母父フォーティナイナー系はエポカドーロと同じ。近親にミッキーアイルやアエロリットなどがおり、パワフルで一本気なスピードを誇る北米牝系だ。府中牝馬Sもヴィクトリアマイルもよく踏ん張っているが、急坂小回りが最も狙いやすい脚質ではある。(距離○スピード○底力◎コース○)





クロコスミア
母デヴェロッペは紫苑S2着。近親にディクタットなどがおり、牝祖Park AppealはCape Crossなどを産んだ名繁殖。ステイゴールドとNashwanを通じるDoronic≒Bustedのニアリークロスはバゴ×ステイゴールドの黄金配合で大成功している。母父に軽いマイラーのボストンハーバーが入り、母のスピードで先行し父のスタミナで粘る脚質になった。京都の下りは得意なので、3年連続大駆けがあるかも。(距離◎スピード○底力○コース◎)



ラヴズオンリーユー
リアルスティール、ラングレー、プロディガルサンの全妹で、欧2歳女王Rumplestiltskinの姪。母母MonevassiaはKingmamboの全妹。ディープインパクト×Storm Catはキズナやエイシンヒカリなど活躍馬多数の黄金配合。力強く差し切ったオークスを見てのとおり、リアルスティールやプロディガルサンよりも脚長で斬れ味がある。内回りの秋華賞をスキップし、ここに絞ったのは正解かもしれない。(距離◎スピード○底力○コース◎)



ラッキーライラックの配合については「母母だけNorthern Dancerが入らない3/4Northern Dancerクロス、エレクトロアート≒Sadler's Wellsのニアリークロス、母がA級北米血脈、総合的にみてオルフェーヴル産駒としては満点に近い配合」とデビュー当時から書いてます

そしてこの日は10Rエスポワールも7Rショウリュウイクゾも完勝で、母系にヌレサドをもつオルフェ産駒が重厚で力強いナスペリオン的ストライドで、見た目にボコボコしてきた京都外回りで躍動してました

とはいえ、ミッキーアイルやアエロリットやテイエムジンソクのステラマドリッド牝系のイメージからしても、ラッキーライラックがまた大レースを勝つとしたら、石橋脩が4角先頭で乗ったときじゃないかという頭は常にあったし、たしかにヴィクトリアマイルもよく踏ん張ってはいるけれど、大箱で差しに回ったらまああんなもんかなあ…という考えでしたね私は

長い手足でディープ産駒よりもしなって馬と一体になって追う姿だけでこりゃ超一流だとわかるスミヨンですが、名うての北米突進牝系で京都外回りの上がりのケイバを有力馬の直後から最内を切り裂いてしまうというのは、まるでヴェルメイユ賞やディアヌ賞を見ているかのようで、三ツ星のフレンチシェフがハンバーガーをフランス料理に仕上げてしまったような、そんなエリザベス女王杯やったと思います

コメント (11)
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