旅路(ON A JOURNEY)

風に吹かれて此処彼処。
好奇心の赴く儘、
気の向く儘。
男はやとよ、
何処へ行く。

SUN & STEEL

2008年08月20日 01時09分45秒 | Weblog
つい先日、三島由紀夫の「太陽と鉄」を読み終えたかと思ったら、今日は褌姿に抜き身の日本刀を携えたby YUKIO MISHIMAの「SUN & STEEL」が目に飛び込んできた。表紙の三島は、こちらが恥ずかしくなりそうなくらい凛々しい姿ではあるが、ややあちら好みを連想させるので、by BILL GATESの「BUSINESS @ THE SPEED OF THOUGHT」を上からかぶせるようにしてレジに急いだ。

ブックオフのレジの女性たちは本の表紙や内容にまったく興味を示さない風を装ってくれるので、別にどおってことはないが、黒々とした体毛の、しかも褌姿のマッチョ(三島)が表紙で英語本であるから、三島を知らない若い世代からみれば趣味を疑われても仕方がないような壮丁だ。事実、三島にはその趣味があったことは広く知られている。

会社に帰ってから同僚に表紙を見せながら「これ誰だかわかる?」と問うてみたら皆さん「三島由紀夫」と答えてくれた。ついでに「これだーれ?」と残りの一冊の表紙を見せたら「これこれ、このコンピュータの・・・、マイクロソフトの・・・」と言葉に詰まる。「ビル・ゲイツ!」と言ってあげたら皆さん頷いた。こんなことをやっている私も私であるが、盆明けの職場は緊張感を欠いている。

「SUN & STEEL」の英文はやや難解である。「太陽と鉄」は三島の文章がすべてそうであるように明晰な日本語で書かれている。「太陽と鉄」をもう一度読んでから「SUN & STEEL」を一気に読む予定だ。机のわきの新潮文庫を眺めていたら「行動学入門」が目についた。ひょっとしたらと目次に目を通してみたら、やはりあった。最終章は「革命哲学としての陽明学」である。数10年前に読んだ記憶がある。これから読み直してみることにする。




映画「半落ち」

2008年08月20日 00時16分34秒 | Weblog
アルツハイマー病で自分が壊れてゆく恐怖におののく妻から懇願されて殺害、嘱託殺人の罪に問われた初老の警察官の犯罪がテーマである。横山秀夫の小説は読んでいない。確か2度目の鑑賞になる。ストーリーを全く覚えていないことに愕然とした。

担当の検事が母校の出身であるように設定されていたり、小説「半落ち」が直木賞の候補作となって受賞がほぼ確定した段階で、選考委員のひとりであるやはり同窓の(別に知り合いではありません。)北方謙三が、事実認識の肝心な部分に致命的な欠陥があることを指摘して横山の直木賞受賞が反故になった。

自分がドナーとなった青年が元気に働く姿を見て、新たな白血病患者のドナーになれる51歳の誕生日まで生きる決心をした梶(警察官)であるが、現実的には受刑者はドナーになれないので、実刑判決を受けた梶の生きる決心の動機が揺らぐことに誰ひとり気が付いていない。裁判官や検事、弁護士に警視正まで登場しているというのに、そりゃないだろうと北方センセがおっしゃったのである。

鴎外の「高瀬舟」も安楽死が主題である。時は江戸時代なので沙汰の方も明快である。平成の作家たちは、心が崩壊してゆくアルツハイマーやボケと取り組まなければならない。困難な作業である。この困難さがゆえに、現実的な法制度の検証を忘れていたでは済まされない。映画の後味が悪いのは、北方センセが指摘した行政法上の問題を避けて通ったからに違いない。