第69号の特集は「アドバンス・ケア・プランニングとは。共同のものがたりを紡ぐ作業」
函館稜北病院 副院長・総合診療科科長の川口篤也医師に話を聞く特集の3回シリーズで、今回が最終回だ。
1回目は急性期病院を持ち回りで開催する「函館オープンカンファレンス」、前回は日常臨床に常に存在するモヤモヤする事例の倫理的課題を検討するツールの「臨床倫理4分割カンファレンス」をテーマとして話を聞いた。3回目となる今回は医療や介護現場で広がっている「アドバンス・ケア・プランニング」について取り上げる。
自らが希望する人生の最終段階における医療・ケアについて、前もって意思表示ができる段階で医師や看護師、介護職員ら周囲の信頼できる人たちと繰り返し話し合いをし、共有する取り組みをアドバンス・ケア・プランニング(ACP)と呼んでいる。ACPは欧米で活用が始まって以来、その重要性は認識されるようになってきた。
2018年3月に改訂された厚生労働省の「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」においても、ACPは人生の最終段階を迎えた本人や家族などと医療・ケアチームが、最善の医療・ケアを作り上げるための合意形成のプロセスを示すものとして明文化されている。2018年の診療報酬改定では、地域包括ケア病棟入院料・入院管理料1および3の施設基準や在宅患者支援病床初期加算の算定には、それぞれACPを踏まえた看取りに関する指針の策定と、それに基づく意思決定支援が要件となった。厚生労働省はACPの取り組みを普及させるために愛称を募集し、「人生会議」に決定した。わかりやすい呼び名を付けることで、ACPを身近に感じてもらうことが狙いだ。
ACPは終末期の治療方針について、患者や家族が医師らとあらかじめ話し合うことだが、人生の最終段階の方針を決定する際には、「本人の意向がわからないことが多い」と川口医師は話す。「終末期には約70%の人が、自分で意志表示をすることができません。ですから、もっと早い段階で、周囲の人と話し合っておく必要があるのです」。人生の最終段階では、まだまだ家族と医療者のみで決めていることが多いが、人生の中で、学校や部活、就職、結婚、住む家など、ある程度は自分で決めてきたはずだ。そうであったなら「生き方」も「逝き方」も自分が決めるということは当たり前のことに違いない。
「患者さんには、何歳くらいまで生きたいと思っているのか。こういうことを外来でも在宅でも普通に聞いています」。ACPは特別な難しいことを話し合うことではない。「生きている間、どんなことをしたいのか。体が弱ってきたときでも、今の家に居たいのか、早めに施設に入りたいのか。まずは、こういうあたりから考え、話し始めるのはどうでしょうか」。心の中であらかじめこうしよう、こうなるだろうと考えておくことが「心積もり」だ。「ACPは、対話によってその人の心積もりや価値観を周囲の人、医療者が共に理解していくこと。プロセス(過程)なのです」。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/25/764d3bf315e379110c3b4a5a1175c182.jpg)
昨年8月26日、市民公開シンポジウム「人生の最終段階について考える〜備えあれば憂いなし〜」が函館市内のホテルで開かれた(南渡島地域包括緩和ケアネットワークなどの共催)。
第1部では川口篤也医師(写真)が「心積もり〜話し合って考える人生の最終段階〜」と題して講演をした。
函館稜北病院 副院長・総合診療科科長の川口篤也医師に話を聞く特集の3回シリーズで、今回が最終回だ。
1回目は急性期病院を持ち回りで開催する「函館オープンカンファレンス」、前回は日常臨床に常に存在するモヤモヤする事例の倫理的課題を検討するツールの「臨床倫理4分割カンファレンス」をテーマとして話を聞いた。3回目となる今回は医療や介護現場で広がっている「アドバンス・ケア・プランニング」について取り上げる。
自らが希望する人生の最終段階における医療・ケアについて、前もって意思表示ができる段階で医師や看護師、介護職員ら周囲の信頼できる人たちと繰り返し話し合いをし、共有する取り組みをアドバンス・ケア・プランニング(ACP)と呼んでいる。ACPは欧米で活用が始まって以来、その重要性は認識されるようになってきた。
2018年3月に改訂された厚生労働省の「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」においても、ACPは人生の最終段階を迎えた本人や家族などと医療・ケアチームが、最善の医療・ケアを作り上げるための合意形成のプロセスを示すものとして明文化されている。2018年の診療報酬改定では、地域包括ケア病棟入院料・入院管理料1および3の施設基準や在宅患者支援病床初期加算の算定には、それぞれACPを踏まえた看取りに関する指針の策定と、それに基づく意思決定支援が要件となった。厚生労働省はACPの取り組みを普及させるために愛称を募集し、「人生会議」に決定した。わかりやすい呼び名を付けることで、ACPを身近に感じてもらうことが狙いだ。
ACPは終末期の治療方針について、患者や家族が医師らとあらかじめ話し合うことだが、人生の最終段階の方針を決定する際には、「本人の意向がわからないことが多い」と川口医師は話す。「終末期には約70%の人が、自分で意志表示をすることができません。ですから、もっと早い段階で、周囲の人と話し合っておく必要があるのです」。人生の最終段階では、まだまだ家族と医療者のみで決めていることが多いが、人生の中で、学校や部活、就職、結婚、住む家など、ある程度は自分で決めてきたはずだ。そうであったなら「生き方」も「逝き方」も自分が決めるということは当たり前のことに違いない。
「患者さんには、何歳くらいまで生きたいと思っているのか。こういうことを外来でも在宅でも普通に聞いています」。ACPは特別な難しいことを話し合うことではない。「生きている間、どんなことをしたいのか。体が弱ってきたときでも、今の家に居たいのか、早めに施設に入りたいのか。まずは、こういうあたりから考え、話し始めるのはどうでしょうか」。心の中であらかじめこうしよう、こうなるだろうと考えておくことが「心積もり」だ。「ACPは、対話によってその人の心積もりや価値観を周囲の人、医療者が共に理解していくこと。プロセス(過程)なのです」。
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昨年8月26日、市民公開シンポジウム「人生の最終段階について考える〜備えあれば憂いなし〜」が函館市内のホテルで開かれた(南渡島地域包括緩和ケアネットワークなどの共催)。
第1部では川口篤也医師(写真)が「心積もり〜話し合って考える人生の最終段階〜」と題して講演をした。