Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『「イギリス社会」入門 日本人に伝えたい本当の英国』

2015-07-05 20:42:08 | 読書。
読書。
『「イギリス社会」入門 日本人に伝えたい本当の英国』 コリン・ジョイス 森田浩之 訳
を読んだ。

しっかりした英国人と知りあいになって、
あれこれとおもしろい話を聞いているような読書でした。

若いころに英国を飛び出して、
日本やアメリカで長く暮らした著者が、
英国人でありながら異邦人のような視線で故国をみつめて、
見えた世界や習慣などを紹介してくれる内容です。

フィッシュ&チップスに限らず、
「まずい」と言われる英国料理のいろいろについてや、
お茶やその習慣についてのこまかいお話、
『1984年』で知られる英国が生んだ世界的作家、ジョージ・オーウェルについての話、
英国名物の代名詞でもあろう、パブの話、
スポーツの話や歴史の話、
現代の事情もちらほらでてきます。

まるでたのしい雑学のように読み受けてしまうのですけれども、
雑学と感じるのは、日本の日常とイギリスの日常がけっこう違うからなんですね。
英国人の生活に根ざしたものであっても、
日本人の生活習慣と違っている異世界の情報や常識であれば、
それは雑学的に受け取ってしまいますからね。

だけれど、そういう日本と違った形式の社会である英国の社会が
きちんと成立しているということを知るということは、
日本の社会や日常に対するぼくらの考えや常識が
唯一無二のものであり、もっとも完成しているものだ、
などと勘違いしないためにも有益なことです。
日本の常識の枠組にとらわれてしまって、
硬直した考えやものの見方をしないために、
こういう外国事情の本を読んでみるといいですね。
もっというと、外国に行ってみるとなお自分のためになるのでしょう。

こっちにはこういう形があって、
あっちにはああいう形がある。
そして、それぞれがそれで成り立っている。
その成り立ちには歴史の重みがあって、
一朝一夕にできあがったものではない。

それが、アメリカ由来の文化がわずかな期間でもって席巻してしまって、
旧来の伝統が損なわれることも昨今おおくなり、
それはいかがなものだろうか、という議論もあるようですね。
本書のあとがきにも書かれていましたが、
他の本でも(たしか『スローシティ』という本)でも論説がありました。

アメリカの合理的かつ効率的な文化が、
グローバリゼーションでもって、いろいろな合理的ではないのだけれど
歴史や民族性などを内包する他国の文化を蹂躙してしまうことがある。
そこらへんについては、自分の生まれ育った土地の歴史を知り、
風土に愛着を感じるようになることが、
独自性のある各々の文化を守ろうという気風を生んでいくのでないかと、
僕は考えるのですが、でも、なかなかね、個人で勉強するのも大変なので、
まずはそういう空気が出来上がればおもしろいのかな、なんて思ったり。

僕はアメリカ文化も嫌いじゃなくて、
両方が並び立つことができればいいなぁなんて考える人です。
・・・あんまり深く考えてないってことかな。


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『自分でつくるセーフティネット』

2015-07-01 22:10:26 | 読書。
読書。
『自分でつくるセーフティネット』 佐々木俊尚
を読んだ。

金持ちと貧困層の二極化が進み、
かつての時代のように安心を提供してくれた会社や村などの、
ムラ社会的気風が薄れた時代である現代で、
どう生き抜いていけばいいのか。
その処方箋を授けてくれる本でした。

難しい言葉が苦手な、あまり読書をしないような人でも読めるであろう
平易でフレンドリーな言葉遣いで書かれている超入門書です。
なんの入門書かといえば、社会学・IT学的見地から考える、
どう生きるべきか、その戦略について。

戦術と戦略の違いも、本書では述べられていますが、
生きていくための戦術が、たとえば、
英語を勉強するだとか簿記を勉強するだとか、
あの上司にはこういう付き合い方をするだとか、
この友人とはこう付き合うだとか、
細かい方法なのに対して、
生きていく戦略というのは、
もっと大きく構えて長期的で広範な範囲を想定するもので、
たとえば、SNSの有効利用で弱いつながりをたくさん作るだとか、
生き方そのものの指針(著者の佐々木さんは「軸」といいます)
を「善き人であれ」として設定して過ごしていくことなどが挙げられています。

内容に関して言えば、
東浩紀さんの『弱いつながり 検索ワードを探す旅』とリンクする部分も大きく、
こないだ読んだアダム・グラントさんの『GIVE&TAKE』の考えも引用されていたりし、
僕も以前著書を読んだことものある社会心理学の山岸俊男先生の考えが紹介されて
さらに論理に組み込まれていたり、
僕も20代のころ総務課だったのでナレッジマネジメントを導入したかったのですが、
そのシステムについての言及も少しあったりもして、
とても、僕のこれまで積み重ねてきたものとつながりのある本で、
おさらいをしているような読書感もありました。

前半の100ページくらいは、これまでの社会と今の社会の分析。
後半の100ページくらいは、そこから導き出される、
いまを生きる方策が述べられています。
それは、細かな指導というものではなくて、
やっぱり、基本となる指針(「軸」)なんですよね。
各読者が生きていくためのベクトルを定めるため、
情報を得るための本とも言えそうです。

それにしても、ここまで簡素に現代の生活環境というか、
共同体環境というかを分析してくれた本はありがたいですね。
きっと、いろいろ考えてこんがらかりがちになっている頭にとっては、
クリアさをもたらしてくれることでしょう。
僕も少なからず、考えが整理された気がしてます。
なかなかに、おすすめです。


Comments (2)
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