Fish On The Boat

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『うさぎパン』

2014-11-28 00:04:10 | 読書。
読書。
『うさぎパン』 瀧羽麻子
を読んだ。

表題作で第二回ダ・ヴィンチ文学賞大賞の「うさぎパン」と、
書きおろしの「はちみつ」の2編を収録した文庫を読みました。
読み終わると、パンがいとおしく、食べたくなります。
パンは本作の重要なエッセンスで、本筋とはまたちょっと違うんですが、
裏にあるパン万歳!的な風の流れを、読み手の心はしっかりとらえる、
というか、書き手にしっかりとらえられてしまいます。
ちかぢか、パン屋さんでトレーとトングをかまえてみようと思います。

「うさぎパン」はやわらかで、やんわりした物語でした。
幸せを感じられるような作品ですね。
裕福でありながら、家族関係がちょっと複雑なのが
物語をぐにゃりとさせていないところかもしれない。
ヒロインの優子はふつうにちゃんとした子で、
まるいイメージなのがいいです。
つまり、とげとげしたところがないのが、ヒロインにもいえるし、
本作品全体にもいえることで、
そういうものがいいよね、っていう作者の価値観のあらわれでもあると
思うところでした。

つづく「はちみつ」では、序盤からちょっと苦しいヒロインの心理が
描写されますが、やっぱりクライマックスに持ってきたものはそこだね、
っていう、明るいものをみる作者の目だとか価値観が
あらわされているような気がしました。
明るさは作者の願いかもしれないですが、
文章のトーンからして、作者の生活から出てくるもののようにも
読めたのですが、どうなんでしょうね。

比喩はほとんどないけれど、描写に、生活を大事にしているひとの
豊かな感性を感じました。
鋭くがゆえに冷たい感性ってよくあると思いますが、
そうじゃない温かな感性がこの小説にはあります。

ほっとして読める面白さでした。


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