寺ノ犬

昨日、歩いていてとあるお寺の前を通ったら、
毎度おなじみなんだけど、
こちらを向いてわんわん吠える濃いクリーム色の犬がいた。
わおんわおんと徐々に頭を上向きにしながら吠えあげる犬。
でも、しっかりこっちを見ている。
それで僕は、声こそださなかったけど、
同じように口をわおんわおんとぱくぱくしてほえあげる真似をした。
徐々に上向き加減に。そしたらどうだ、犬のやつ、
顔をそむけてそしらぬ顔をした。
「よし！仲間だ！安心した」と思ったのか、
「へんなヤツだ、目ぇ合わせたらいかん」と思ったのか。
どちらにしろ、この犬への対処はわかったぞ。
周りに人がいたら対処できないけどね。

それで今日、同じお寺の前を通って、
今日はどうかな、とちょっと楽しみだったんですよ。
ウォーキング用の格好は昨日と同じだし、
バカ犬だったとしても僕のことを覚えているだろうって。
そしたら今日はその犬、お食事中でした。
アルミか何かでできたボウルみたいな容器に口をつっこんで、
はぐはぐと夢中になって食べていた。
なぜか後ろ足はピーンと伸ばした姿勢。
そんな格好で夢中になって餌を食べている犬。
ボウルはところどころへこんでいて、その食事をするさまは
ひもじさを感じさせるようで、なんか情けなかった。

これからは、その犬がどんなに威勢よく吠えようと、
威厳をもたせるような吠え方をしようと、
「どうせあれだろ、あんな食事のシーンを見せつけた犬だろ、
たいしたことないヤツだからほっとけ」というような態度になるかもしれない。
いや、僕のことだからまたかまうかもなぁ。
僕だってそんな情けなくない人ではないからねぇ。
そう思うと、「たいしたことないヤツだからほっとけ」
なんていろいろな人に断ぜられて今があったりするのかなぁ。

おぉ、こわ。
おぉ、こわ。