
先日、私にとっては初見の「トラツグミ」に出会った。最初は6メートルほど先で採餌していたのだが、徐々にカメラマンが並ぶ木道に近寄ってきた。時には1メートル以内に近づき採餌を続けていたが目線は人に向けられていた。
(巻頭の写真)
保護色の為、普通に歩いている人には見つけられないことが多いという。

仲間からは「鳥博士」と呼ばれる知人の説明で、採餌するときの体をリズミカルに振る(地面を叩き虫を追い出す)ことから、「トラダンス」と呼ばれていることも知った。下の写真3枚は4kで撮ったビデオから切り取ったもので、体は動いているのに、頭部がほとんど動いていないのである。腰を振るリズムは3拍子や4拍子で一定していた。
「トラダンス1」

「トラダンス2」

「トラダンス3」

食欲旺盛で一時間以上も採餌を続けていた。下の写真は「百足(ムカデ)」を捉え食べている姿。

友人と二人で撮っているときに虎鶫はやや離れていったのだが、上空を見るや否や慌てるかのように、我々に寄ってきたのである。通常野山の小鳥は人を見ると逃げる事が多いので、人を恐れることはないようだ。

さらに調べてみると、トラツグミは夜鳴くことから妖怪の「鵺(ぬえ)」に例えられ、平安時代には「鵺鳥(ぬえどり)」との古名があり、万葉集の長歌や歌で「枕詞」として使われていた。
下の和歌は柿本人麻呂歌集から万葉集巻第十に掲載された、国歌大観番号2031の和歌です。
「吉哉 雖不直 奴延鳥 浦嘆居 告子鴨」
(よしゑやし ただならずとも ぬえどりの うらなけをりと つげむこもがも)
たとえ、直接にではなくても、ぬえどりのようにひそかに嘆いていると、あの人に告げてくれるような子が欲しいよ。
という意の和歌です。ほかにも枕詞「鵺鳥」を使った長歌や和歌あるのですが・・・長くなるので。

人を怖がらないのはもしかすると「鵺(ぬえ)」という妖怪の名がつけられているため、平安時代から人に食べられたことがないのかもしれない。雀などが逃げるのは過去に人に食われたことがDNAとして書き込まれているためだとも言われている。