日本野鳥歳時記(大橋弘一著)にチュウシャクシギの記事がありましたので、近所の干潟に飛来したチュウシャクシギの写真と一緒に紹介しましょう。<・・・>が引用部
<下向きに湾曲した長いクチバシを持つシギ類は俗にシャクシギ類といわれ、日本では6種が記録されています。そのシャクシギ類の中で最も見かける機会の多いのがチュウシャクシギです>
<シャクシギのシャクとは柄杓(ヒシャク)の杓(シャク)のことで、その体を杓に、クチバシを柄(エ=ヒ)に見立てたネーミングです>
<チュウシャクシギは全国の干潟や草地に渡来、数羽から数十羽の群れでいることが多く、海水域ではカニをよく捕食しています>
<秋に見るシギには夕暮れ時の風情がよく似合い、新古今和歌集に「心なき 身にも 哀れは 知られけり シギ立つ沢の 秋の夕暮れ」という西行の和歌があります>
その意味は<出家して俗世間を捨て、感情を無くしたはずの我が身にも、シギの飛び立つ秋の夕暮れの風情は、しみじみと心にしみる>
俗世間を捨て、感情を封印した(心なき身とした)はずの西行が、シギ(恐らく見かけることが多いチュウシャクシギ)を見て感情的になっているところがこの和歌の醍醐味です。
一方、「心なき身」の解釈には、ものの情趣を解さない自己卑下説がありますが、西行は両方解釈できるように敢えてそう詠んだように思えます。
承久の変で隠岐に流された後鳥羽上皇は、歌人としての西行を高く評価し、後鳥羽上皇が勅撰した新古今集1970首の中で最も多い94首が西行の作品となっています。