万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

高過ぎる太陽光の買い取り価格―事業者優遇か

2012年04月23日 15時23分40秒 | 国際経済
 7月に始まる再生エネ法の施行を前にして、再生エネの買い取り価格が、経産相の「調達価格等算定委員会」で検討されています。太陽光発電は、1キロワット時あたり税込みで42円を原案とするそうですが、買い取り価格の決め方も含めて、この価格決定は、疑問に満ちています。

 第1に、価格決定の任に当たる「調達価格等算定委員会」の委員会のメンバーはわずか5名であり、そのほとんどが、環境系の学者や活動団体の人々です。委員長の植田和弘氏に至っては、反・脱原発を掲げる大阪市の「エネルギー戦略会議」の座長をも務めており、再生エネ優先の基本姿勢は、この人選からも伺えます。植田氏は、以前にも、再生エネ普及のためなら高値買い取りも仕方がないと発言しており、一般の電力の利用者や消費者の利益は、無視を決め込んでいます。

 第2に、負担者が全国民であるにもかかわらず、”有識者会議”が価格を決定するとなりますと、国民の声は全く届きません。予算の決定権が議会にあるように、強制的に国民に負担を強いる価格決定は、本来、民主的な手続きを経るのが筋です。この価格、経産相の承認を以って決まるらしいのですが、ここでも、国民無視が見られます。価格決定の機関は、国会に設置した方が、まだましです。

 第3に、42円という高値設定は、安価な中国製のパネルを念頭に、日本製のパネルを設置する事業者でも、利益が上がるよう配慮したためと説明されています。しかしながら、法律において、国産パネルを条件としなければ、逆に、悪質な業者は、安く中国製パネルを購入して高い価格で電力を売り、利益を拡大させるはずです。また、法的に国産パネルに限定しますと、外国から市場開放を要求されるか、WTOへの提訴を示唆されるかもしれません。

 第4に、ドイツやスペインでは、既にこの制度は挫折しており、同じ失敗を繰り返さないための工夫は、どこにも見当たりません。失敗の責任は、全て国民に押し付けるのでしょうか。

 電力会社の電気料金については、反・脱原発派の人々が、総括原価方式を”ぽったくり”として批判していましたが、再生エネの価格決定もまた、この批判を免れることはできないのではないでしょうか。電力自由化とは180度逆方向に、高値固定化となる再生エネは、事業者優遇制度であると共に、国民の声の反映と国民負担の軽減という視点が抜け落ちていると思うのです。

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