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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日本国の食料&エネルギーの自給率を上げる政策を

2025年04月01日 11時42分03秒 | 日本政治
 食料安全保障の強化を謳った日本国の大手商社とアメリカの大手穀物メジャーとの業務提携は、日本国の農業の行方に暗い影を投げかけています。同提携は、5年後の2030年には、200万トンから300万トン、即ち、日本国内の米生産量の凡そ二分の一弱の大量の穀物が日本国に輸入されることを意味するからです。目標達成の見込みがなければ、三菱商事がADMに対して輸出施設の整備に1000億円もの投資を行なうはずもありませんので、同提携の背後には、日米両国の政府が動いているとも推察されるのです。

 人口減少が続く中、2、300万トンもの穀物を新たに日本国内で消費されるとは思えず、おそらく、政府は、日本国民の食卓に上る主食を、国産のお米から輸入穀物に置き換えようとしているのでしょう。備蓄米の放出にも拘わらず、米価が高値を維持しているのも、‘米作放棄、輸入促進’が政府の基本方針であるからなのかも知れません。日本国民は、同政府の方針を支持しているわけでも、ましてや、お願いしたわけでもありません。むしろ、農家の方々の生活が安定する形で国内農業が維持され、適正な価格で国産のお米が提供されることを望んでいることでしょう。言い換えますと、仮に、上記の推理が間違っていなければ、政府は二枚舌で国民を騙しており、日本国の民主主義が風前の灯火であることとなりましょう。

 危機的な現状に鑑みれば、今後の日本国政府の対応、並びに、今夏の参議院議員選挙において掲げられる各党の農政に関する公約が注目されるところであり、日本国民は、彼らが国民の代表であり、国民の信託に誠実に応える政治家であるのかどうか、見極める必要がありましょう。全般的な物価高や自給率の問題を含めて食糧問題は、凡そ全ての国民の重大な関心事ですので、与野党ともに、選挙に際して同問題を避けて通ることはできないはずです。

 かくして、日本国政府が国民を騙しつつ穀物輸入拡大政策を遂行している疑いは強まるばかりなのですが(同時に、高級米輸出政策も遂行・・・)、一つだけ弁明の道があるとすれば、それは、エネルギー支援としての穀物の利用なのでしょう。3月28日付けの日経新聞の記事には、ADM側の事業提携の狙いとして、‘バイオ燃料向け原料の販売拡大への期待’が挙げられています。「三菱商事はENEOSホールディングスと連携し、和歌山県で再生校区燃料(SAF)製造設備を計画中」とあるからです。

 ADM側は、同製造整備の原材料として日本国に自社が取り扱う穀物を売り込もうとしている、と解釈されるのですが、‘計画中’段階に過ぎませんし、5年後に200万から300万トンもの穀物が同施設のみで使用されるとは思えません。やはり、上記の穀物輸入拡大説に軍配が上がるのですが、それでも、ADM側がバイオ燃料の生産に期待を寄せているとしますと、ここで一つ明らかとなるのは、農作物は、エネルギー資源となり得る点です。この点に注目しますと、仮に、日本国内の米需要を十分に賄えるだけの生産量を超える余剰生産力、即ち、休耕田や耕作放棄地、あるいは、荒蕪地があるとしますと、こうした土地は、エネルギー用の作物の栽培地としたほうが、余程、日本国の利益に適います。

 第一に、エネルギー資源の乏しさが、経済も国民生活も他国に依存せざるを得ない状況に日本国を置いてきましたので、この弱点を克服することができます。第二に、近年、増加してきた休耕地等への太陽光発パネルの設置は、たとえそれがエネルギー自給率を高めたとしても、パネル生産国の中国へのエネルギー依存を意味します。また、景観を著し損ねると共に、自然災害時における危険性も指摘されています。バイオ燃料用作物の生産であれば、これらの問題も解決します。第三に、エネルギー資源の海外依存度が低下すれば、自ずと国際社会における日本国の政治的立場も強化されます。アンフェアな国際分業体制に組み込もうとするグローバリストの予防をも阻止できますので、一石二鳥以上の効果が期待されるのです。減反の挙げ句に高級ブランド米の輸出国を目指すよりも、遥かに国民の賛同を得られることでしょう。

 もっとも、バイオ燃料に関してはコストの面が問題とはなり得ます。肥料等を海外からの輸入に頼るのでは、真に自給率を高めたことになりません。そこで、雑草のように無肥料や低肥料、無農薬、放置状態でも問題なく生育し、収穫量も高い農産物の研究・開発を進める必要もありましょう(同時に、容易に燃料化し得る分解・発酵等に関する技術も・・・)。新たな目的が見つかりますと、意欲が湧いて、人の能力や行動力も高まるものです。日本国を救う国産技術の開発に期待したいと思うのです。



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