万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

フロリダ銃乱射事件-ヘイトされる側によるヘイトクライム

2016年06月13日 15時12分11秒 | アメリカ
フロリダで米史上最悪の無差別乱射 根深い銃問題とヘイトクライムの懸念
 昨日、アメリカのフロリダ州オーランドにおいて、忌まわしい銃乱射事件が発生しました。銃撃による死亡者は50名にも上り、犠牲者の数からしますと、アメリカ史上、最大の銃乱射事件ともなりました。

 事件の現場が性的少数者の人々が集まるナイトクラブであったことから、犠牲者の大半も、性的少数者であったものと推測されます。この情報から、マイノリティーに対するヘイトクライムとして批判されておりますが、その一方で、特殊部隊に射殺されたマティーン容疑者もまた、マイノリティーであるイスラム教徒であったと報じられております。事件発生後、ISもすかさず犯行声明を公表しており、イスラム過激派のメンバーであった可能性は濃厚です。つまり、犯人もまたイスラム教徒というマイノリティーであるため、事件後の”ヘイト批判”は、どちらに向いているのか曖昧な様相を呈しています。批判の対象が、性的少数者に対するイスラム過激派のヘイトに向けられているのか、それとも、事件後の影響として、今後、強まるであろうイスラム教徒に対する一般の人々のヘイトに向けられているのか、判然としないのです。

 この事件、あたかも混沌とする現代社会の縮図のようです。何故ならば、イスラム過激派、テロ、移民問題、性的少数者問題、銃規制、ヘイトクライム…などなど、現代社会が抱えるありとあらゆる不安定要因が、この事件には内包されているからです。とは言うものの、この事件で一つだけはっきりした点があるとすれば、それは、ヘイトされる側であっても、ヘイトクライムを犯し得るというものです(否、自身のヘイトクライムが自らのヘイトに跳ね返っている側面も…)。それ程に、今日の人間社会は複雑なのであり、ヘイトされる側=保護されるべき弱者とする構図は、今や、説得力を失っているのです。フロリダ銃乱射事件は、否が応にも、現代という時代の現実を人々に突き付けているように思えるのです。

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