goo blog サービス終了のお知らせ 

万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

王室・皇室は国民の理性を抑圧してしまう

2025年04月03日 11時42分53秒 | 統治制度論
 実写映画の『白雪姫』は、実のところ、今日の王室や皇室が抱える深刻な問題を人々の意識に上らせてしまったように思えます。美しいお姫様と勇敢な王子様が登場するおとぎの世界として安心して読めたストーリーも、それに現代の“価値観”が投入されますと、時代が現代に向けて逆流し、俄に現実味を帯びてくるからです。そして、この感覚は、否が応でも今日の王室や皇室の存在に対して抱く国民の疑問や違和感を強めてしまうのです。

 客観的に現状を観察すれば、今日という時代にあって、既に王室も皇室もその存在意義が失われていることは否定のしようがないように思えます。先ずもって民主主義が価値として根付いている今日では、かつての君主のように統治者にあって政治的権力を行使し得る立場にはありません。立憲君主制にあってもこの点は変わりなく、『マグナ・カルタ』を機に早くに立憲主義が確立し、‘国王は君臨すれども統治せず’とする原則が成立したイギリスにあっても、第二次世界大戦後に制定された日本国憲法の第一条において天皇の地位が統合の象徴と位置づけられている日本国にあっても、もはや統治の分野にあって権力を行使することはできないのです。民主的制度には、誰もが認める合理的な根拠がありますので、君主主権論や君主親政待望論は、国民主権には太刀打ちできないのです。そもそも統治権力は、人々の必要性から生じているため、民主主義には必然性があるからです。しかも、征服や植民地化の過程にあってしばしば見られるように、統治権を持つ君主が外国や海外勢力の‘傀儡’ともなれば、国家の独立性が損なわれるリスクも伴います(実際に、今日の王族も皇族も、グローバリストの‘傀儡’となっている疑いがある・・・)。

 かくして政治分野における君主としての役割は、より合理的で精緻なメカニズムを有する民主的制度の発展により失われることとなるのですが、この流れにあっても王族や皇族に残されていたのが、国民を纏める権威としての社会的な役割です。ところが、権威というものも、それがフォロワーの心理に依存する限り、国民の理性との間に摩擦や軋轢が生じるものです。全ての国民の心を捉えることができる人物は、それが君主であれ誰であれ、この世に存在するとは思えません。また、人をもって求心力とするには、相当のカリスマ性を備えるか(この求心力は理性に基づくものではい・・・)、神聖性や超越性を演出するか(国民を洗脳するか、騙すことに・・・)、暴力的手段や脅しを用いて恐怖心に訴える(下部組織を使った政策的な同調圧力の醸成も・・・)しかないのです。何れの手法を用いても、人々の精神活動の自由を縛り、内面の自由をも侵害しかねませんので、国民に対して理性の名の下で権威の承認を求めることが不可能であり、むしろ反発や抵抗を受けるケースも想定されるのです。

 しかも、君主制の多くは世襲制ですので、権威喪失のプロセスは科学的に説明され得ます。王統や皇統の遺伝子は、仮に建国や王朝の祖から断絶がないとしても、代を重ねる度に減数分裂により半減する一方で、これらの遺伝子は、時間の経過と共に広く国民の間に拡散するからです。この生物学上の事実は、誰もが否定し得ないはずです。また、今般の実写版『白雪姫』のように、‘お姫様’と‘山賊’の組み合わせともなれば、‘高貴なる血統’を根拠とした君主の地位は不安定となり、当然に、人心の離反を引き起こすことにもなりましょう(たとえ慰問を受けたとしても、国民は‘ありがたい’とは思わなくなる・・・)。あるいは、イギリスの名誉革命時のように、支持派と不支持派とに国民が分裂し、統合どころの状況ではなくなります。このことは、生物学的な見地からすれば、国民統合の役割も果たせなくなることを意味します。しかも、‘高貴な身分’としての特権が行使されたり、国民を見下すような言動をとれば、国民の反感さえ招きかねないのです。

 合理的に考えれば、形骸化したとはいえ、王族や皇族の存在意義は既に失われており、今日では、むしろ国民の理性を抑圧するリスクさえ認められます。それにも拘わらず、政治サイドでも同制度の維持には熱心な一方で、抜本的な見直しに関する議論が起きてこないのは、国民の理性抑圧の手段としての利用価値があると見なされているからなのかも知れません。そして、その利用目的がグローバリストによる人類支配体制への組み込みにあるとしますと、なおのこと国家の将来的な在り方についての議論を急ぐべきではないかと思うのです。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 風刺になってしまう実写映画... | トップ | 倉西研究所のメンバーのご紹介 »
最新の画像もっと見る

統治制度論」カテゴリの最新記事