万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

経済産業省は正気なのか―1000万人の転職計画

2012年04月22日 16時07分53秒 | 日本経済
 本日の日経新聞の一面に、首を傾げたくなる記事が掲載されていました。それは、経産相の試算によれば、2020年までに、医療介護、ヘルスケア、新エネルギー産業などで、1000万人の雇用を生み出せるというものです。

 経産省では、これらの産業を新たな成長産業と位置付け、積極的に、製造業からの人材移転を推し進めるそうです。裏を返せば、製造業において、2020年までの間に、1000万人の雇用が失われることを暗に示唆しているとも考えられ(試算では、製造業の雇用は横ばいとしてはいますが…)、本気で産業の空洞化を推進しようとする経産省の恐るべき計略が伺えます。一方、医療介護で269万人、新エネで321万人、ヘルスケアなどで303万人としていますが、その大半は、公的制度に関連する職種であり、いわば、政府依存度の高い社会主義的な性格の強い事業分野です。医療介護の雇用が増加すれば、比例して社会保障費が増加しますし(あるいは保険料値上げ…)、新エネでも、再生エネ法の下での買い取り制度を前提としています。新成長産業の雇用が増えれば増えるほど、国家財政と国民生活を圧迫し、早晩、行き詰ってしまう公算が高いのです。また、産業の衰退により所得水準が低下すれば、ヘルスケアを利用できる国民の数も限られますので、わずか8年後に、303万人もの雇用が生まれるとは考えられません。しかも、製造業では、男性の働き手が多いにも拘わらず、成長産業は、女性向けの職種が大半を占めておりますので、スムースに転職が進むとも思えないのです。ここで意味する”成長”とは、産業の発展や所得水準の上昇を伴うものではなく、単に、政府主導で雇用数を増やすに過ぎないようなのです。

 結局、経済産業省は、産業空洞化政策への批判をかわすために、ひとまずは、非現実的な”ユートピア”を掲げて厳しい現実を糊塗し、国民の不安を誤魔化そうとしているようかのように見えます。日本国には、世界一のスーパーコンピュータがありますが、この計画をスパコンでシミュレーションさせれば、即座に、高い値の”失敗確率”を弾き出すのではないかと思うのです。

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