万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

バイデン大統領の行方―米上院の弾劾裁判に注目を

2021年01月21日 12時40分46秒 | アメリカ

 2021年1月20日、混乱の内にようやくホワイトの執務室の椅子に座ったバイデン大統領。公式には‘大統領’ではあっても、内心、これを認めたくない国民も多いのではないかと思います。水面下における選挙結果の容認派と否定派との分断とも言える状況を敏感に察してか、同大統領自身も、就任式の演説において‘民主主義の勝利’や‘国民の団結’を訴えています。しかしながら、これらの美辞麗句も、払拭し得ない不正選挙問題がある限り白々しく響くのみなのです。

 

 メディアでは、否定派を過激なトランプ支持者や狂信者のように報じていますが、分断が起きているのは一般国民の間でのことです。これは、バイデン大統領が演説で国民の団結を訴えている点においてむしろ証明しています。否定派の中核を成しているのは、常識や良識を備えたアメリカの中間層なのでしょう。ワシントン・ポストとABCニュースが実施した世論調査によれば、今般の大統領選挙が不正選挙であったとみなすアメリカ国民は3分の1程度と報じられておりますが、一貫してバイデン陣営に有利な報道に終始してきたメディアのことですから、この数字も怪しいものです。

 

 何故ならば、一般的な人としての理性を働かせれば、熱狂的なトランプ支持者ではなくとも、今般の選挙に不正があったことは、認めざるを得ない事実であるからです。実際に、ナヴァロ報告書等が示した証拠や証言のみならず、トランプ陣営から提起された訴訟に対する裁判所の却下理由の中にも、‘選挙結果を覆す程の影響はなかった’として不正行為の事実を認めているものもあります。不正選挙とは、‘勝つ’ために行われるのですから、‘選挙結果に影響がない’ということは、その実行者の状況判断や動機を推測しても、本来、あり得ないはずです。バイデン陣営が実際に国民からの圧倒的な支持を得ていたならば、不正を行う必要は全くなかったはずなのですから。

 

 それにも拘らず、不正問題の真相の究明なくしてバイデン大統領が誕生したのですから、納得しない人が出現するのは当然のことです(しかも、中国や超国家勢力も絡み、安全保障上の問題でもある…)。この状況下で、同氏が‘民主主義の勝利’や‘国民の団結’を訴えたとしても、当の本人がこれらを破壊した張本人なのですから、否定派がその声に素直に耳を傾けるとは思えません。否、選挙結果を認めてしまえば、自らの良心に恥じる行為として自責の念に駆られることになりましょう(悪の容認…)。米民主党は、過激なトランプ支持派の蛮行とし、全責任を負わせることで事態の収拾を図ろうとしていますが、真に恐れるべきは、一般の人々の良心なのではないでしょうか。自己の内面の良心を問うことは、政治的意見の相違、利害対立、そして個人的な好悪の感情を越えたところにあるからです。

 

 バイデン大統領が全国民から正当な大統領として受け入れられるには、トランプ陣営の主張に対して動かぬ証拠を以って反証し、身の潔白を証明する以外には道はありません。トランプ陣営側から提供された情報が全てがフェイクであったことを立証しなければならないのです。この点に鑑みますと、まずもって注目されるのは、今後、上院で開かれる弾劾裁判です。同弾劾裁判にあって何が明らかにされるのか、バイデン大統領の行方も、同裁判における事実の開示にかかってくるのではないかと思うのです。そしてそれは、与野党問わず、全ての米上院議員の良心をも問うこととなるのではないでしょうか。

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