万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

バイデン政権は日本国の対米不信を理解すべき

2021年01月23日 12時25分56秒 | アメリカ

アメリカでは一先ずはバイデン政権が発足し、日本国を含め、全世界の諸国の人々がとりわけ対中政策の行方に関心を寄せています。トランプ政権における対外戦略の成果の一つが、オバマ民主党政権下にあって軍事大国に伸し上がった中国の封じ込めであったため、同政策が引き継がれるのか否か、誰もが無関心ではいられないのです。今後のバイデン大統領の対中政策については、凡そ、2つのシナリオが想定されるかもしれません。

 

第1のシナリオは、深刻な分断が指摘されているとはいえ、反中においては結束しているとされる上下両院、並びに、アメリカ国民の世論に応え、トランプ路線を引き継ぐというものです。仮にバイデン大統領がその就任式で高らかに‘民主主義の勝利’を宣言したように、同政権が、アメリカ国民の世論を最大限に尊重し、これを最優先に政策決定を行うとするならば、前政権の対中強硬路線は継続されることとなりましょう。

 

第2のシナリオとは、就任直後にパリ協定への復帰に転じたように、反中政策から親中政策へと180度、舵を切り替えるというものです。バイデン大統領は、中国を増長させたオバマ政権下にあって副大統領を務めています。また、今般、民主党陣営を応援した金融やIT大手、並びに、米グローバル企業の多くは、中国に多額の金融利権を有したり、中国に製造拠点や開発拠点を設けるなど、半ば、中国と‘利益共同体’を形成する、あるいは、取り込まれている企業も少なくありません。フェースブックのザッカーバーグ氏のように個人的な血縁関係や交友関係にあって中国との間にコネクションを有する企業のCEOもおります。これらはアメリカの枠を超えた‘超国家権力体’のメンバーでもあるのでしょうが、バイデン政権が、国民よりも同権力体や一部企業の利益を優先するならば、バイデン政権は、アメリカ経済が衰退しようとも、中国との協調路線を選択することでしょう。

 

しかも、同職あって、同大統領は、訪中時に子息のハンター氏を同伴し、巨額の中国利権を獲得するチャンスを与えており(しかも、同氏が関わった中国企業は顔認証システムの提供によりウイグル人のジェノサイドにも関与…)、今なおもチャイナ・スキャンダルの渦中にもあります。事実である以上、否定のしようもない汚職疑惑なのですが、同大統領側が正当な報酬であったと主張したとしても、おそらく、中国側は、同大統領を脅迫する材料として同スキャンダルを利用することでしょう。

 

以上に二つのシナリオを挙げてみましたが、バイデン政権は、第2のシナリオを選択する可能性の方が高いように思われます。チャイナ・スキャンダルが示すように、同大統領が高い政治倫理を自らに課しているとは考え難く、マネーの力や暴力に対して人一倍弱いことは明白であるからです。しかしながら、‘民主主義の勝利’を打ち出し、‘中間層の擁護’に言及した手前、あからさまに第2のシナリオを遂行することは憚られることでしょう。そこで、同政権は、おそらく、アメリカ国民や全人類を騙そうとするのではないかと推測されるのです。その際のシナリオも、およそ二つ考えられます。

 

第1のシナリオは、中国がお得意とするサラミ作戦と同様に、国民に気付かれないように漸次的、かつ、目立たぬように反中路線を切り崩してゆくというものです。この目的のためには、国際機関を利用し、アメリカの対中強硬策を撤回させようとするかもしれません。アメリカのWHOへの復帰は、ワクチンを含む中国製の医薬品の国際的な販路拡大を援けるためかもしれませんし、WTOに対しましても、中国の主張を認め、現行の対中制裁関税をルール違反と認定するよう圧力をかけるかもしれません。バイデン政権であれば、自らの路線変更が世論の批判を浴びないよう狡猾に手をまわし、責任を巧妙に他者に転化させないとも限らないのです。

 

そして、第2のシナリオは、上述した第1のシナリオを利用するというものです。トランプ政権に対する評価の一つとして、‘戦争をしない大統領であった’というものがあります。この結果、アメリカの軍需産業が利益を得る機会を失い、軍産複合体とも称されてきた同業界がバイデン政権を支持する理由となったというものです。近年、中国による先端兵器の開発により平時における抑止力としての防衛力強化の必要性も増しているため、同説の説得力は薄いのですが、バイデン政権の対中強硬姿勢、あるいは、米中軍事衝突の裏側で、米中が密かに手を結んでいる可能性も否定はできなくなります。

 

第2のシナリオにおいて最も不利益、否、甚大な被害を受ける可能性が高いのは、実のところ、日本国からも知れません。オバマ政権下にあって‘ジャパン・ハンドラー’の一人とされたジョセフ・ナイ氏は、かつて、米中戦争に日本国を巻き込みながら(もっとも、尖閣諸島が発火点となれば、表向きは、日本国が米国を戦争に巻き込んだ形に…)、その途中で米軍を撤退させ、日本国を中国に明け渡すとする極秘シナリオを練っていたと噂されていました。同噂の真偽のほどは不明ですが、表面的な敵対関係とは裏腹に米中が結滞している場合には、日本国は、再度、国土が焦土と化すのみならず、人民解放軍が進駐してくる事態もあり得るのです。

 

バイデン政権の行方につきましては憶測の域を出ませんが、日本国政府は、政治の表面のみならず裏の裏までを読みませんと、形は違っても第二次世界大戦時の再来となりましょう。そして、バイデン政権も、その発足時の経緯からして同盟国から信頼されていない現状を理解すべきではないかと思うのです。もしかしますと、バイデン大統領がその就任式の演説で修復を訴えた‘同盟関係とは、過去の政権が構築した隠れた’米中同盟‘であったかもしれないのですから。

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