中国発の新型コロナウイルス禍は、日本国内では、深刻なモノ不足をもたらし、人々の日常生活にまで支障をきたすようになりました。入手が困難となったモノは、マスクや除菌製品といった感染防止のための商品にとどまらず、紙製品一般にまで及んでいます。その中でいささか奇妙に感じられるのは、お米の不足です。新型コロナウイルスとお米との間には何らの直接的な関係がないように思えるのですが、何故か、品薄になっているというのです。
多くの人々が、近い将来、自由に買い物に出かけることができなくなる事態を予測し、主食であるお米の備蓄を増やそうとしたのかもしれません。感染者、もしくは、その疑いがあれば、二週間ほどは自宅での閉じこもり生活を強いられますし、あるいは、今後、感染が爆発的な拡大を見せるとすれば、日本国政府も中国と同様に全国民に対して長期的な外出規制を敷く可能性もあるからです。こうした予測に基づいて人々がお米の買い溜めようとしたのであるならば、新型コロナウイルスとの間に接点を見出すことができます。
その一方で、もう一つの見方があるとすれば、それは、世界規模で懸念されている穀物不足です。日本国内ではそれ程には危機的には報じられておらず、情報量も少ないのですが、ソマリアやエチオピアといったアフリカ諸国では、新型コロナウイルス以上に甚大な被害を与えています(蝗害)。イナゴの大群に襲われますと、襲撃を受けた地の田畑の作物は全てのイナゴに食い尽くされ、一面荒れ地になってしまうのです。穀物の収穫は諦めざるを得ず、イナゴの大群が去った後には、人々がその日の食事にも困る深刻な飢餓が待ち受けています。一時、イナゴの大群がインドに達し、中国に襲来するとする情報も流されていました。また、世界各地での干ばつや酷暑、さらにはオーストラリアで山火事が発生するなど、近年の異常気象による穀物収穫量の減少も懸念材料の一つとなりましょう。
おそらく、真偽が入り混じった情報に最初に反応したのは、マスクと同様に危機や商機に敏感な中国人であったのかもしれませんが、在日中国人の購買行動につられる形で日本国内でも買占め行動が発生し、日本国民の間でもお米不足に対する漠然とした不安感が広がったのかかもしれません。折しも新型コロナウイルスに対する警戒感からのモノ不足が重なり、国民の買い急ぎ的な消費行動を増幅させたとも考えられるのです。
こうしたお米の品薄の原因については憶測に過ぎませんが、イナゴの大量発生や異常気象による穀物収穫量の減少は紛れもない現実の脅威ですし、何れにせよ日本国内において一時的であれお米の入手も困難となったのも日本国民の多くが現実にあって経験した事実です。不意を突いたかのようにお米が突然に店頭から消えたことに、多くの国民も驚いたことでしょう。
日本国政府は、新型コロナウイルスの対策に忙殺されていることでしょうが、何故、お米の品薄が発生したのか、人々の情報への反応や消費者心理を含め、分析を急ぐべきです。そして、これを機に、日本国政府は穀物事情に関する内外の情報収集に努め、今後、コメ不足や米価の高騰が起きないように予め準備を進めておくべきように思えます。その際には、2011年8月8日に復活したコメ取引にも注意を払うべきかもしれません。現在、東京穀物商品取引所にてコメの先物取引が行われていますが、価格上昇を期待した内外からの投機的な資金の流入もあり得るからです(新型コロナウイルス・ショックにより証券市場から商品市場へと資金が移動する可能性も…)。
新型コロナウイルス禍はパンドラの箱を開けたかのようであり、日本国の予想外に脆弱な食糧・生活必需品供給システム、一部の人々による利益目的の悪質な買占め、農産物輸出促進の農政、並びに、予測される穀物不足など、様々な問題等も、人々の目の前に現れるようになりました。感染拡大の防止については後手後手の対応が批判を浴びましたが、日本国政府は、新型コロナウイルス問題から派生的に生じる様々な危機に対して先手先手で手を打ち、汚名を返上すべきではないかと思うのです。
北極熊さまのおっしゃいます通り、外出禁止に備えた備蓄行動の一環なのかもしれません…。その一方で、蝗害や異常気象による穀物不足には、予め対策を講じておくべきではないかと考えております。