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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

自由な言論空間のためには新たなシステムが必要

2025年04月16日 11時36分28秒 | 日本政治
 今般、Gooブログをはじめ、NTTグループにあってユーザーによる発信サービスの終了が相次いだことは、インターネットといった情報・通信サービスのプラットフォームが重要な社会インフラであり、かつ、言論の自由を支えていることを、改めて思い知らされることとなりました。全ての事業者のサービスが消滅したわけではありませんので、過剰反応との見方もありましょうが、今般の一連の出来事は、情報・通信事業の在り方を根本的に見直す機会とすべきかもしれません。

 80年代初頭から顕著となった新自由主義、否、グローバリズムの波は日本国にも及び、先ずもって、1985年に日本電信電話公社が民営化され、今日のNTTが誕生します。サッチャリズムやレーガノミクスの潮流に日本国も流されたのですが、このときは、インフラ事業の民営化に潜む問題性やリスクを察知していた人は、それ程には多くはなかったことでしょう。どちらかと申しますと、市場の競争メカニズムが導入され、事業の合理化や効率化が進み、低価格化とサービス向上といった恩恵を受けるとする‘触れ込み’により、民営化歓迎の論調が優っていたのではないかと思います。

 かくして日本国の民営化政策はグローバリズムに流される形で実現したのですが、‘情報・通信事業を含むインフラ事業は民間事業者に委ねるべきなのか’という、官民の線引きに関する基本的な議論を置き去りにされたまま、今日に至ってしまったようです。しかしながら、今日、民営化がもたらす諸問題は、決して無視できるものではありません。そもそもインフラ事業とは公共性の高い分野ですので、‘公共物の私物化’が容易に起きてしまうからです。しかも、規模の拡大による費用低減効果が強く働きますので、独占や寡占も生じやすく、事前の説明や国民の期待とは逆に、サービスの低下や利用料金の値上げもあり得てしまうのです(値上げには各種事業法により規制があるものの、現状では、‘あってなきが如し’です・・・)。

 さらに悪いことに、一端、民営化されますと、たとえ公共性が高い事業であったとしても、決定権は民間事業者に移りますので、国民は、もはや口を出すことはできません。公営事業の場合には、選挙に際して公約として提示されたり、オープンな議論にも付されるのですが、民間企業が事業体であれば、民主的な手続きを経る必要はないのです。今般のNTTグループによる一方的なサービス打ち切りも、‘民営化されたインフラ事業’の悪しき事例ともなりましょう。このケースでは、国が大株主でありながらも、表向きは民間事業者の立場にありますので、政府が、民主的議論や手続きを回避し、民間を装いつつ隠れて言論封鎖を試みるという最悪のケースともなり得るのです。あるいは、政府及びNTTグループの背景には、人脈等を介してグローバリストの意向が働いているのかも知れません。

 民営化と共に多くの事業者が新規参入したものの、今日では、上述したインフラ事業の特徴から寡占化が進み、民営化のメリットが消える一方で、デメリットのみが目立つようにもなりました。民営化は、海外への市場開放も伴いますので、インフラ利権の譲渡として海外事業者による‘植民地化’の手段ともなり得ますし、企業機密や知的財産を含む情報漏洩やサイバー攻撃等のリスクも自ずと高まります(この点、ネット上に保存されてしまうクラウドは果たして安全なのでしょうか・・・)。

  情報・通信の領域は、国民のコミュニケーションや言論空間でもありますので、誰もが発信者となると共に、自らに必要な情報を自由に収集できる場とすべきことには異論はないはずです。この問題を解決するためには、新たな公共システムの開発が不可欠なのですが、最低限、日本国政府、外国政府、内外の民間企業、並びに、グローバリストの介入を受けたり、言論統制の手段とならない仕組み、即ち、中立・公平性を確保するための独立性を制度的に保障する必要がありましょう。

 一案として、国民の一人一人にドメインを配布し(ネット上の住所のようなもの・・・)、自らの意見を公表したり、情報提供をし得る場を保障すると共に、今日の民間事業者と同様に、掲示板、ブログ、ホームページ等の提供サービスを永続的に実施するとする方法も考えてみました。あるいは、専門知識や技術を有する国民の有志が、言論空間の自由を護るべく、自発的にこうした営利目的ではなく、かつ、あらゆる介入をブロックし得る、いわば無機的な公共インフラとしての仕組みを造ることはできないものでしょうか(日本版Word Press?)。政府の現状を見る限り、後者の方が望ましいようにも思えます。

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