万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

シリアの化学兵器-政府側が使用したのでは

2013年08月28日 15時42分37秒 | 国際政治
シリアの化学兵器使用、断定 反体制派「反転攻勢への一歩」(産経新聞) - goo ニュース
 シリア情勢は、アサド政権側が化学兵器を使用したことから、29日にも、化学兵器使用に対する懲罰として、米欧諸国による軍事介入が開始されると見通しとなりました。

 アサド政権側は、化学兵器を使用したのは反体制派であると主張しておりますが、シリアを取り巻く状況からしますと、政権側である確率の方がはるかに高いものと憶測されます。そもそも、シリアは、1972年4月に生物化学兵器禁止条約に署名はしたものの批准しておらず、締約国の地位にはありません。つまり、批准を見送ったシリア政府の態度には、化学兵器を保有、あるいは、使用する用意があったことを伺わせるのです(シリアは同条約の締約国ではないものの、化学兵器使用による無差別大量殺人は、人道的介入の根拠として正当化された…)。そして、使用した化学兵器が、サリンであると推測されていることは、化学兵器をめぐる国際的な協力関係の存在を暗示しています。サリンと言えば、オウム真理教が日本国内で使用したことで、その名が知られるようになりましたが、イラン・イラク戦争に際して、イラク軍は、イラン軍、並びに、クルド人に対してサリンを使用しました。当時のイラクが、バース党のフセイン政権であったことを考えますと、関係が必ずしも良好ではなかったとはいえ、シリアもまた、事実上、バース党一党独裁体制ですので、両国の間に軍事技術上の交流があったとも考えられます。そして、今日なおも独裁体制を敷く北朝鮮もまたサリンの保有が疑われており、サリン保有国には、社会・共産主義陣営の影が見えるのです(かつての親玉はソ連邦…)。

 サリンは、水で容易に分解される上に、製造段階では極めて不安定となる物質ですので、高度な製造・保管技術を要するそうです。反政府側が、こうした施設や技術を保有しているはずもありませんので、化学兵器を実際に使用されたとなれば、最も疑わしいのは(100%断定はできませんが…)、アサド政権を置いて他にないのではないかと思うのです。

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2 コメント

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Unknown (ねむ太)
2013-08-29 00:06:46
こんばんは。シリアで使用された化学兵器はフセイン政権下でのイラクが保有していたものであるかもしれないとの見方もあります。
サリンではなくマスタード・ガスや旧式の化学兵器の可能性もあるようです。
ジャスミン革命とはしゃいで投票箱を持ち込んで米国式の民主主義の結果がこれです。
中国に投票箱を持込み我々の言うところの民主主義を実現しようとすれば、果てしのない内乱と殺し合いが続くことだけは保証できます。
我々の言うところの民主主義はあくまでも、物事を理性的に捉考え議論する事が前提条件で、すぐに暴動を引き起こしたり実力行使するような民族には長い時間をかけ教育を施し意識改革を必要とします。
中東で最も民主化が進みかけていたのが、フセイン率いるイラクだったのです。
女性の服装も、ある程度自由を認め、教育を受けることも認め、少しずつ民主主義に移行する最中だったのですが、石油利権の樽にブッシュは大量破壊兵器の存在を認めたと一方的に攻撃を開始し、中東のモデルケースとしての国家を潰してしまいました。
ジャスミン革命などと喜び、民主化したと言っても行政が、それまでの負の遺産を総括し機能するまで時間がかかります。
民主主義での物事の決定のプロセスを理解していない国民が政府に不満を持ちデモをする、それを利用して過激なテロに走る連中が出てくる、武器・弾薬は二束三文で転がっていますので容易に手にはいります。
テロリストは国民を盾にして政府に対し武力攻撃を仕掛ける、政府はテロリストを排除する為に武力攻撃もやむを得ない状態に陥る。
シリアのアサド政権は国民(女子供を盾に使っているようですが)
そこには民意など存在せず、テロリスト・政府どちらが勝って、残された国家の資産を自由に浪費するか(シリアは原油は枯渇しています)部族社会のまま国民に対して教育を施さないまま、米国式の民主主義を持ち込んだ結果がシリアでありエジプトです。
某山本太郎という大馬鹿は、宗教や部族社会、格差の大きさなど全く理解しないままに、市民に選挙で決めさせろ、と言ってもましたが、結局同じことの繰り返しです
我が国の国民の大半も民主主義(選挙による投票行為の結果は世界中どこに行っても通用すると)考えがちですが、独裁と呼ばれても対立する勢力の利害調整を行いながら少しずつ改革して行く他ない社会も存在します。
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ねむ太さま (kuranishi masako)
2013-08-29 08:35:12
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 シリアは、ジャスミン革命の波が及びませんでしたので、今現在、国民の多くが、アサド独裁の打倒を目指して反政府軍を結成しているという段階のようです。結局、独裁体制にあって、利害調整ができなかった証拠ですので、独裁容認の根拠にはならないのではないかと思います。また、確かに、エジプトでは混乱が続いておりますが、他の民主化を達成した諸国はどうでしょうか。エジプトの失敗例だけを取り上げ、”民主化は間違い!”と決めつけるのは、早すぎます。多くの国民が、一人の独裁者によって生殺与奪の権を握られる状況は、やはり不幸としか言いようがないと思うのです。部族を社会を尊重するならば、議会機能を強化し、調整機能を働かせるべきです。もちろん、民主主義には、欠陥もありますので、是正する必要はあるのですが、少なくとも、独裁容認のご意見には、賛成しかねるのです。
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