北方領土に新たな師団配備か=国防相が方針―ロシア
本日の産経新聞の一面に、北方領土問題に関する記事が掲載されておりました。同記事によりますと、ヤルタ密約の草案でも、南樺太と千島列島は明確に区別されており、後者に関しては、大西洋憲章に不拡大方針との関係から、敢えて「引き渡し(hannded over)」という表現が用いられたとしています。
解説では、「引き渡し」の表現は、当事のソ連邦が北方領土を日本固有の領土と認識していた証拠でもある、としています。また、連合国内部から異議が唱えられることを避けるためのスターリンの深謀遠慮の結果ではなかったか、とする識者の見解も掲載しておりますが、重要なのは、"引き渡し"は、日本国によるソ連邦への領土割譲を意味しないのではないか、という点です。
南樺太島を含む日露戦争以前のロシア領について記した草案の第2条では、”…に関するロシアの権利”という表現が用いられ、ロシアの正当な権利である故に「返還される」とするスタンスで記述されています。言い換えますと、ソ連側も、1855年の日露通好条約、並びに、1875年の千島・樺太交換条約において平和裏に合意した国境線を基礎として、領土の正当性を判断している姿勢が伺えるのです。
一方、北方領土について記した第3条は、千島列島はソ連邦に”引き渡される”としており、”ロシアの権利”の文字は見えません。通常、条約において領土割譲を記述するに際しては、”移譲(cede)”といった表現が用いられますので、「引き渡し」では、必ずしも割譲を意味しません。「引き渡し」という曖昧な表現であったからこそ、米英も、不拡大方針に抵触しないと判断してヤルタ密約に合意した可能性もあるのです。つまり、三カ国の合意とは、ソ連邦による占領の容認、すなわち、沖縄と同様に、いずれ日本へ返還されるべきという意味に留まるとする見方もできます。あるいは、戦後に開かれるであろう正式な講和会議において、北方四島等との区別などの詳細を詰めるつもりであったのかもしれません。
ヤルタ密約は、国際法上の条約無効の要件を備えておりますので、日本国政府は、国際司法の場で無効を主張できるのですが、ヤルタ密約当事の当事者の理解を確認しておくことも重要な作業です。草案において”割譲”とは表立っては書けず、「引き渡し」としか表現できなかったところに、ソ連邦、そして、ロシア側の主張における弱点があるように思えるのです。
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本日の産経新聞の一面に、北方領土問題に関する記事が掲載されておりました。同記事によりますと、ヤルタ密約の草案でも、南樺太と千島列島は明確に区別されており、後者に関しては、大西洋憲章に不拡大方針との関係から、敢えて「引き渡し(hannded over)」という表現が用いられたとしています。
解説では、「引き渡し」の表現は、当事のソ連邦が北方領土を日本固有の領土と認識していた証拠でもある、としています。また、連合国内部から異議が唱えられることを避けるためのスターリンの深謀遠慮の結果ではなかったか、とする識者の見解も掲載しておりますが、重要なのは、"引き渡し"は、日本国によるソ連邦への領土割譲を意味しないのではないか、という点です。
南樺太島を含む日露戦争以前のロシア領について記した草案の第2条では、”…に関するロシアの権利”という表現が用いられ、ロシアの正当な権利である故に「返還される」とするスタンスで記述されています。言い換えますと、ソ連側も、1855年の日露通好条約、並びに、1875年の千島・樺太交換条約において平和裏に合意した国境線を基礎として、領土の正当性を判断している姿勢が伺えるのです。
一方、北方領土について記した第3条は、千島列島はソ連邦に”引き渡される”としており、”ロシアの権利”の文字は見えません。通常、条約において領土割譲を記述するに際しては、”移譲(cede)”といった表現が用いられますので、「引き渡し」では、必ずしも割譲を意味しません。「引き渡し」という曖昧な表現であったからこそ、米英も、不拡大方針に抵触しないと判断してヤルタ密約に合意した可能性もあるのです。つまり、三カ国の合意とは、ソ連邦による占領の容認、すなわち、沖縄と同様に、いずれ日本へ返還されるべきという意味に留まるとする見方もできます。あるいは、戦後に開かれるであろう正式な講和会議において、北方四島等との区別などの詳細を詰めるつもりであったのかもしれません。
ヤルタ密約は、国際法上の条約無効の要件を備えておりますので、日本国政府は、国際司法の場で無効を主張できるのですが、ヤルタ密約当事の当事者の理解を確認しておくことも重要な作業です。草案において”割譲”とは表立っては書けず、「引き渡し」としか表現できなかったところに、ソ連邦、そして、ロシア側の主張における弱点があるように思えるのです。
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