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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

頑張れフィリピンー諦めたらお終い

2016年12月18日 13時55分40秒 | 国際政治
比外相「中国に抗議しない」=南沙の防空施設問題
 中国がスプラトリー諸島において防空施設を整備している件について、フィリピンのヤサイ外相は、滞在先のシンガポールで「われわれは中国を止められない。できることは今何もない」と述べたと報じられております。諦めたとも解される発言ですが、フィリピンには、本当にできることは何もないのでしょうか。

 フィリピンが、真に自国の領土を守りたいと望むならば、あらゆる手段を尽くすのが政治家の仕事です。アメリカとの関係はぎくしゃくしてはいるものの、まずは、米比相互防衛条約に鑑みて、米国との協議の場を設ければ、中国に対する牽制となります。報道だけでは、スカボロー礁にも防空施設が設置されたのか否かは分かりませんが、2012年頃までは、同礁はフィリピンの管轄下にありましたので、奪回対象として同盟の発動要件を充たしていないわけではありません(仲裁判決での地位は領海を設定できる岩礁)。

 また、近年、機能低下が顕著とはいえ、国連安保理の枠組みを利用することは、仲裁判決不履行の問題に対する最も正当な手続きであり、手段です。現行の国際司法制度には、判決履行を強制する手段がない欠陥がありますが、国連には、平和的紛争の解決を実現する役割が託されていますので、フィリピンには、安保理に訴える権利があります。とりわけ、国連憲章第6章の問題として提起すれば、中国の事実上の拒否権を封じることもできます。

 さらには、ベトナムなど、中国によって同様の不当な権利の侵害を受けている諸国との間で協議の場を設け、共同戦線を張るのも一案です。ASEANには、親中派の諸国もあり、一致団結した行動には妨害が予測されますが、直接に被害を受けている諸国による共同抗議であれば、中国には痛手となるはずです。広く国際世論に対して中国の不当性を訴えるだけでも、風向きが変わってくる可能性があります。


 今年7月12日に判決が示された仲裁裁判において、フィリピンは、殆ど満点に近い形で勝訴しました。国際司法制度における判決という最強のカードを手にしながら、”何もできない”として南シナ海における中国の海洋侵出と軍事拠点化を放任するようでは、権利の放棄にも等しく、国際社会に対する悪影響も懸念されます。フィリピンは、国際司法制度を破壊させる、中国の共犯者として不名誉な評価を国際社会から受けることにもなりかねません。諦めたらお終りですので、フィリピンには、中国の属国に転落せぬよう、最善を尽くしていただきたいと思うのです。

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コメント (2)
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