万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

慰安婦問題-アメリカは誤解しているのか?

2015年12月28日 15時03分31秒 | アジア
慰安婦問題、合意なら米が歓迎声明 日韓外相きょう会談
 本日午後から、韓国のソウルでは、慰安婦問題について日韓の外相による交渉が行われております。2時頃には両外相による声明が発表されるのではないか、とする見通しもありましたが、今のところ、音沙汰がないようです。

 ところで、日韓の関係改善については、アメリカの強い後押しが指摘されております。日韓両国ともアメリカの同盟国でありながら、慰安婦問題が喉元に刺さった骨となって、対中、並びに、対北での同盟国間の結束を妨げてきたからです。韓国の”対日歴史闘争”には、中国との連携が確認されており、慰安婦問題の消滅は、近年、歴史問題の共有により急速に接近してきた中韓の絆を喪失させることをも意味します。アメリカが、従来の親中政策を本格的に転換し、”中国との対立も辞さず”の姿勢にシフトしたとするならば、日韓関係改善は、アメリカのアジア政策の一環となるのです。このため、アメリカが、慰安婦問題の不可逆的解決を望んだことは想像に難くありません。しかしながら、仮に、アメリカが、慰安婦問題を韓国が主張する20万人もの朝鮮人女性の強制連行を含む”性奴隷”問題として理解しているとしますと、今般の”妥結”は、日韓関係の根本的な改善に繋がるとは思えません。何故ならば、”性奴隷説”を前提とした”妥結”では、日本国内の世論が納得しないからです。また、アメリカが、史実を正確に掴んでいながら、日本国に妥協を迫っているとしますと、日本国側の屈辱的な譲歩となり、日米同盟にさえ悪影響を与えかねません。米議会では慰安婦問題に関する対日批判決議が成立していますが、過去の米政府の調査や報告書では、慰安婦性奴隷説は否定されておりますので、アメリカは、実のところ、事実を知っている可能性の方が高いのです。そして、アメリカが、史実を十分に把握した上で、韓国側に対して慰安婦問題からの撤退を求めたとしますと、現状では、韓国の世論が沸騰し、対日関係のみならず、対米関係をも損ねるかもしれません。何れのシナリオでも、日韓関係は、アメリカが期待する方向、即ち、改善の方向には向かわないのです。

 事実なき偽りの歴史を認めることは不正行為ですので、”性奴隷説”に基づく日本国側の一方的な妥協は禁物です。となりますと、最も正しい解決は、韓国側が事実を認め、対日要求を取り下げる以外にはありません。韓国では、慰安婦を職業婦人と記した大学教授が起訴されるなど、言論弾圧が蔓延っていますが、この問題の根本的な解決には、正確な史実が韓国国内で広まり、北系団体の挺対協は別としても、韓国国民の多数が諦めの境地に達する必要があります。この状況に至るには時間を要しますので、少なくとも、年内の妥結は回避すべきと思うのです。

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