万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

オリンピックは消滅するのか?-巨額費用問題

2015年12月20日 15時06分05秒 | 国際政治
東京五輪費用、1兆8千億円 当初の6倍、大幅な公的資金投入避けられず 大会組織委試算
 2013年9月、2020年のオリンピック・パラリンピック開催地に東京が決定した時、日本国内は、歓迎の声で沸返りました。しかしながら、この時、国民の多くが実際の経費負担額を知っていたならば、別の反応が起きていたかもしれません。

 先日、大会組織委員会が試算した大会運営費用が公表されましたが、その額、誘致時の「立候補ファイル」では3013億円であったところ、その6倍の1.8兆円にも上るというのです。この巨額費用につきましては、納得しがたい面が少なくありません。第1に、誘致時における3013億円は、過小に試算されています。前年の2012年に開催されたロンドンオリンピックでも予定額を大幅に越えており、2.1兆円が費やされています。つまり、誘致時おいて、東京オリンピックでも凡そ2兆円あまりの費用がかかることは、既に分かっていたことなのです。国民からの反対を警戒して予定額を低く見積もったのでしょうが、実際の経費が6倍ともなりますと、国民は、騙されたとする被害者意識を持ちかねません。第2に、6倍にも跳ね上がった主たる理由は、人件費や資材の高騰が原因として挙げられています。しかしながら、日本国の場合、2012年度と比較して人件費が急速に伸びた事実はありませんし、また、高騰と表現できる程の物価の上昇も見られません。むしろ、国際市場では、資材価格の低下が見受けられます。第3に、委員会側は、当初は見込んでいなかった”選手らを輸送する首都高速道路に専用レーンを設置するための補償費”や”会場周辺の土地賃貸料”なども高騰要因として挙げておりますが、これらが必要不可欠の経費であるのか疑問なところです。代替方法があるかもしれないのですから。

 以上に、主要な疑問点について述べてみましたが、最大の問題点は、仮に、オリンピック・パラリンピックの開催に凡そ2兆円の経費がかかるとしますと、今後、立候補する都市が消滅するのではないか、ということです。あまりにも開催地の財政負担が重すぎるからです(持続可能性の喪失…)。オリンピックを全世界の人々が楽しむことができるスポーツイベントして残すためには、東京オリンピックでは、せめて平均的な首都レベルの都市でも開催可能な額に納める必要があるのではないでしょうか。

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コメント (2)
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