万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

2022年”北京冬季オリンピック”の真意は?

2015年08月03日 15時29分19秒 | 国際政治
 先日、国際オリンピック委員会は、2022年の冬季オリンピックの開催地として中国の北京を選びました。開催地決定に喜びを爆発させているのは中国のみであり、見渡したところ、日本国を含めて他国の反応はどこか冷めているようにも感じられます。

 2008年の北京夏季オリンピックを思い起こしますと、開催を間近にして中国政府がチベット弾圧を行ったため、世界中で、聖火リレーに対する抗議運動が発生しました。日本国内でも、聖火リレーのコースとなった長野では、”フリー・チベット”運動に対抗するために、中国が在日中国人を大量に動員するという事件に発展しています。2020年の冬季オリンピックでも、同様の事態が発生する可能性もあるのですが、過去の騒動に目を瞑って北京を選んだ背景には、何らかの思惑があるはずです。最も単純な第一の推測は、対抗馬であったカザフスタンを凌駕する莫大なチャイナ・マネーが誘致活動に投じられたというものです。もっとも、両国間の桁違いの資金力の差にも拘わらず、僅差での決定ですので、チャイナ・マネーの影響力は限られているのかもしれません。第二の憶測は、敢えて中国に国際レベルのイベントに参加させることで、昨今の中国の身勝手な行動を押さえようというものです。即ち、各国は、北京オリンピックボイコットの権利を得たに等しく、2008年の抗議運動を省みれば、チベット人やウイグル人などに対する弾圧には慎重になるはずです(当然に軍事行動も…)。財政面でも、競技施設といったインフラ整備や大気汚染の改善に資金を振り向けるとなれば(雪が降らないので競技環境を整えるには、相当の費用を要する…)、軍事予算等の抑制効果もあるかもしれません。そして第三の憶測とは、北京オリンピックの開催が、中国の現体制を崩壊に導く導火線となることです。既に、共同開催地の張家口市でも地価の高騰が始まっているそうですが、地価を含めて全般的な物価上昇が発生しますと、国民の不満も高まります(競技場建設のための強制立ち退きへの反対運動も…)。また、東京オリンピックでも利益誘導が疑われておりますが、開催場所が中国ともなれば、その腐敗ぶりは東京を遥かに凌ぐはずです。オリンピック利権で肥え太った共産党幹部達に対して、中国の一般国民は、どのような視線を投げかけるのでしょうか。

 2008年の夏季オリンピックでは、中国の躍進を印象付けたとしますと、2022年の冬季オリンピックでは、その黄昏を目にするかもしれません(オリンピックに始まり、オリンピックに終わる?)。そして最悪の場合には、オリンピックを道連れにするのではないかと思うのです。

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コメント (2)
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