万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国こそ第一次世界大戦の教訓に学ぶべき

2014年01月08日 15時40分22秒 | 国際政治
第1次世界大戦100年 日中関係でも「ミュンヘン」より「サラエボ」を考える時だ(フィナンシャル・タイムズ(翻訳gooニュース)) - goo ニュース
 フィナンシャルタイムズ曰く、日中、並びに、米中関係は”ミュンヘン”よりも”サラエボ”を教訓として対処すべきなそうです。ミュンヘンの融和とは、独裁者の領土拡張主義に対して毅然とした態度を採らなかったことが、世界大戦を誘発したとする教訓であり、一方、サラエボの教訓とは、些細な事件に対する関係諸国のナショナリスティックな対応が世界を大戦に巻き込んだ、ということのようです。

 フィナンシャル・タイムズは、”日中関係においてどちらの教訓を生かすべきかと”という問いを設定し、後者のサラエボの教訓に従い、ナショナリズムを抑えて譲歩することを勧めています。この説を補強するために、同紙は、キューバ危機に際してケネディ大統領を取り上げて、軍事行動の進言を退けて、サラエボの教訓に従ったと推測しています。しかしながら、この時、アメリカの一歩も引かぬ態度に譲歩したのは、ソ連邦のフルシチョフでした。この事例では、むしろ、アメリカが”ミュンヘン”を、ソ連邦が”サラエボ”を教訓としているのです(結果として、第三次世界大戦を無事に回避…)。二つの教訓は、手緩い反応と過剰反応との、正反対の教訓なのですが、政策決定者の予想を超えて事態が暗転したという意味では共通しています。両教訓を適宜に生かすことが重要であると考えますと、中国の覇権主義を抑えるには、日米が”ミュンヘン”を選択する一方で、中国が”サラエボ”に学ぶしか道がないようにも思えます。しかも、第一次世界大戦の発端は要人暗殺事件であり、キューバ危機もミサイル基地の建設でしたが、中国の場合には、日本国に対する直接的な領土侵攻を狙っていますので、日本国側には時間の余裕も譲歩の余地がないのです(この点は、第二次世界大戦の状況に近い…)。

 フィナンシャル・タイムズは、関係諸国が子供じみた軍事的な威信に拘っていることを嘆いていますが、ようやく国際社会にも法の支配が広がる時代を迎えながら、中国の野心が人類を無法な野蛮状態に戻しかねないとする危機意識は低いようです。大人の視線から徒に日米に譲歩を促すよりも、中国に対して国際法の順守とICJでの解決を強く求める方が、よほど、第三次世界大戦を防ぐことができるのではないかと思うのです。

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コメント (2)
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