万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国の深刻な大気汚染-甘い環境規制の厳しい結末

2013年01月31日 15時35分29秒 | アジア
全土の13%、大気汚染深刻=有害物質の濃霧が覆う―中国(時事通信) - goo ニュース
 19世紀、産業革命によって世界の工場と化したロンドンの空は、煙突から出る煙で、鉛色に汚れていたそうです。21世紀に至り、世界の工場の座についた中国でも、澄み切った青空を見ることは難しくなりました。

 中国の急速な経済成長の原動力として、しばしば指摘されるのは、安価な労働力と人民元安政策です。中国経済を支える二本柱とも言えますが、もう一つ、要因を挙げるとしますと、それは、低い環境規制レベルなのではないかと思うのです。公害が深刻化した70年代以降、先進国では、環境規制を強化し、汚染物質の排出量を減らす努力を続けてきました。その甲斐あって、有害物質の排出量は大幅に減少し、今では、どの国でも青空が広がるようになりました。このことは、公害対策としては高く評価されているのですが、その半面、中国のような環境規制のレベルが低い国と比較しますと(地球温暖化ガスも含めて…)、どうしても、工場の立地条件としては不利になります。つまり、先進国で環境規制のレベルを上げれば上げるほど、高い規制を嫌って工場が海外に流出し、環境規制の緩い中国に生産拠点が集中するという事態を招いたのです。中国は、世界第二位の経済大国となるために、深刻な大気汚染という、高い代償を払ったことになります。

 甘い環境規制は、厳しい結末をもたらしたのですが、汚染の範囲は、中国一国に留まらず、高濃度の汚染大気は、西日本にまで迫っていると報じられています。このままでは、長年、積み上げてきた日本国の環境努力が、水泡に帰すことにもなりかねません。自国民の健康を守り、かつ、他国に被害を与えないためにも、中国当局は、至急に、環境規制の強化を図るべきと思うのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。


にほんブログ村 政治ブログへにほんブログ村
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする