万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

北方領土の3島返還は択捉島割譲のこと

2013年01月11日 12時01分13秒 | 国際政治
森元首相、3島返還で決着を=北方領土「現実的に対応」(時事通信) - goo ニュース
 2月に特使としてロシアを訪問する予定の森元首相が、テレビ番組に出演中に、3島返還論を口にしたことが、波紋を広げております。

 森元首相は、「日ロ賢人会議」のメンバーにも名を連ね、ロシア通でも知られています。しかしながら、3島の返還が、択捉島のロシアへの割譲を意味することを考えますと、この解決方法が、決して”賢い”とは思えないのです。第二次世界大戦の発端は、ナチス・ドイツとソ連邦によるポーランド侵攻にあり、連合国は、侵略国との闘いを戦争の大義に掲げてこの世界大戦に臨みます。この間、連合国側は、大西洋憲章やカイロ宣言で不拡大方針を掲げ、戦争による領土割譲に終止符を打とうとするのです。因みに、最初に戦争による領土割譲に反対したのは、当のソ連邦のレーニンでした。ところが、ソ連邦は、連合国の一員であることを根拠に、日ソ中立条約を破棄して参戦したにも拘らず、不拡大方針を無視し、北方領土を占領してしまうのです。この行為は、連合国側が想定した戦後の平和構想にも著しく反しています。

 日本国が、択捉島のロシアへの割譲を認めることは、戦争による領土割譲を、事後的に承認することに他なりません。中国などが、領土的な野心を露わにする中、日本国が、平和条約の名の下で割譲を容認することは、むしろ、平和への脅威となるのではないでしょうか。日本国政府は、侵略を否定するためにも、あくまでも、4島返還の主張を貫くべきと思うのです。

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コメント (4)
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