万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

リスクに満ちたソフトバンクのアジアグリッド構想

2011年09月13日 15時24分27秒 | アジア
被災地との信頼回復を最優先 枝野経産相が会見(朝日新聞) - goo ニュース
 就任したばかりの枝野経産相が、電力会社の地域独占の見直しに言及したことと、ソフトバンクのアジアグリッド構想との関連性は確認されてはいませんが、電力事業をめぐり、水面下で孫氏を中心とした怪しげな動きがあるようです。孫氏の脱原発の主張や再生エネへの肩入れには、別の思惑があるとは以前から指摘されてはいましたが、ここにきて、ようやくその野望の全貌が明らかになりつつあるようです。

 日本、ロシア、中国、韓国、モンゴル、チベットを電力網で結ぶというアジアグリッド構想は、日本以外の諸国にとりましては、確かにメリットとなります。ロシア、モンゴル、チベットには、莫大なエネルギー資源が埋蔵されていますし、中国と韓国は、原子力発電所の増設で電力の売り手に回ることができます。一方、日本は、と申しますと、幾つものリスクが立ちはだかっていると思うのです。第一に、他国にエネルギーを頼ることは、安全保障上のリスクをもたらします(有事に際して電力供給網を切断されれば、国内はエネルギー危機に…)。ライフラインを頼る買い手側は、常に売り手側に対して弱みを握られることになります。ロシアには、2006年にウクライナに対して天然ガスの供給を止めたという前歴があり、同様の措置を採られる可能性が否定できません。また、経済においても、電力市場の開放問題が絡むことになります。既存の日本の電力会社が、安価な電力を無制限に外国から買い取ることができるとなりますと、割高となる国内の全ての発電所は、閉鎖に追い込まれるかもしれません。もちろん、日本国内の再生エネルギー拡大事業も意味がなくなりますので、孫氏の態度は矛盾しています。一方、外国の電力事業者の参入を許すとなりますと、日本の電力会社そのものが、存亡の岐路に立つことになります。

 メガ・ソーラプロジェクトでの売り込みに、外資系の総合電機メーカーや太陽光パネルメーカーが”孫詣”しているそうですので、孫氏が、日本国の将来など、歯牙にもかけていないことはよく分かります。そうして、アジアグリッド構想が実現すれば、安価な電力と引き換えに、日本国は、エネルギー供給という国家の”命綱”を外国に依存することになるのですから、迂闊に進めるべきプロジェクトではないと思うのです。

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コメント (2)
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