万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

トヨタの現地生産―中国の合弁政策はWTO違反では

2011年09月05日 15時40分35秒 | 国際経済
トヨタ、HV基幹部品は中国で…初の海外生産(読売新聞) - goo ニュース
 昨日、トヨタがハイブリッド車の基幹部品であるモーターや電池などを現地生産すると発表したことで、技術流出が懸念されています。しかも、中国自動車の大手である第一汽車集団との合併で生産するというのです。

 中国政府は、外国の企業が進出するに際して、自国企業との合弁を義務付ける政策を遂行してきました。今回の合弁も、外資規制草案に従えば、中国側が51%の出資、トヨタ側が49%の出資ということになりそうです。加えて、海外の自動車メーカーに対しては、PHVや電気自動車については、モーター、電池、制御システムの3つの基幹部品のうち、少なくとも一つは、現地生産するように求めてもいるそうです。つまり、中国企業側に決定権がある合弁会社に対して、日本企業側が、先端技術を提供する形となり、将来的には、合弁企業の出資比率が低下したり(中国企業化…)、他の中国企業に技術もろとも譲渡される可能性も否定できません。この合弁事業の背景には、レア・アースの問題もあるのでしょうが、日本企業にとりまして、長期的にメリットとなるのか、疑問なところです。

 WTOの各種の協定では、内国民待遇を定めており、中国政府による外国企業に対する不公平な待遇は、協定違反となるとも考えられます。日本国政府は、WTOへの提訴も視野に入れて、日本企業が、中国において不利益を蒙らぬよう、対応策を講じるべきと思うのです。

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