知的生産をしようとする場合、特別な情報を持とうと努力しなければ独創的な考えは出てきません。他人さまに聞いた話をくり返したりしているだけでは知的生産にはなりません。また数多くの情報を積み重ねるだけで知的生産ができるかというと、そんなこともない。独創的なアイデアがひらめくということには、少なくとも情報の交錯が必要です。別の言葉で言えば、この道一筋的に同じ種類の情報ばかりを積み重ねただけでは独創は絶対に生まれてこない。(中略)
知的生産ということは何かのもつれあい、あるいは矛盾からでなければ出てこないと思います。さらにいえば、おそらく独特な発想は独特な生活からしか生まれない。みんな同じ会社で、同じように新聞を読み、同じ店でいっしょに昼飯を食い。マージャンをする、これでは独創は出にくいのです。みんな仲良くしているけれどもマージャンはつきあわない。しかし、人づきあいの悪いヤツだと思わせない。マージャンはしないが映画論ならいつでも徹底的につきあう。これくらいのことは必要でしょうね。ベストセラーと新聞だけを読んでいるところには、まず独創的な思想はできにくい。他人の読まない本を読む、徳川時代の本でもよいし、明治の本でもよい。アメリカの本でもよいでしょう。
京都大学名誉教授 桑原武夫
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