超高層住宅(タワーマンション)で、最も慎重に検討すべき問題。
いかに持続可能にしていくのか。
本当に持続可能なのか。
********日経新聞20180327***********
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28577740W8A320C1SHA000/
限界都市マンション75% 修繕積立金に不安
国の目安届かず 高齢化で増額難しく
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マンションの修繕工事(3面きょうのことば)に使う財源が不足する懸念が強まっている。所有者が払う修繕積立金の水準を日本経済新聞が調べたところ、全国の物件の75%が国の目安を下回っていた。適切な維持管理には引き上げが必要だが住民合意は簡単ではない。特に大都市に多い超高層住宅(タワーマンション)は増額に不安がある。管理不全予備軍の増加は周辺に悪影響を及ぼしかねない。(関連記事経済面に)
マンションの劣化を防ぐには12~15年ごとの大規模修繕が必要だ。1回目は外壁塗装などで済むが、2回目以降は給水・排水管や昇降機の更新に移り、工事費が膨らむ。積立金が足りないと適切に修繕できず資産価値が落ちる可能性が高まる。
国土交通省は2011年に修繕積立金の指針を策定。30年間の均等払いで、15階建て未満は1平方メートルあたり月178~218円、20階建て以上のタワーマンションは同206円を必要額の目安とした。新築入居時に払うことが多い修繕積立基金はゼロで試算している。
住民合意に壁
日経は不動産情報会社グルーヴ・アール(東京・港)の協力を得て、全国の物件の1割にあたる1万4千棟の修繕積立金を分析した。基金の実勢平均額を加え独自に試算すると、約1万500棟が国の目安を下回った。
このうち、約900棟あるタワーマンションは8割弱が未達だった。国の目安の半分に達していない物件も1割あった。
修繕工事費は建物の立地や形状、設備内容に左右されるので、国の目安を下回っても「すぐに不適切とは判断されない」(国交省マンション政策室)。一般的に新築時の積立金は安く設定し、段階的に上げる計画を立てることも多い。
ただ、積立金の増額には管理組合の総会で過半の出席・賛成が必要だ。管理規約を変える増額は所有者の4分の3以上の同意が求められる。
日経の調べでは築20年以上でも56%が国の目安に届いていない。「住民の所得が年齢とともに増え、段階的な増額も許容される前提は崩れてきた」。東京カンテイ(東京・品川)の井出武上席主任研究員は低成長・高齢化時代の限界を強調する。
国交省によると、マンションの世帯主が60歳以上の比率は1999年度の26%から13年度は50%に高まった。東京都八王子市のあるマンションは昨年、最初の提案から8年がかりで増額を実現したが「高齢者から『値上げは勘弁して』との声が多く上がった」(担当したマンション管理士)。
「大規模物件ほど合意形成が難しい」と見るのは不動産コンサルティング、さくら事務所(東京・渋谷)の土屋輝之執行役員だ。世帯数が多く、「住民の世代も所有目的もバラバラだからだ」。実際、築20年以上で国の目安に満たないタワーマンションの割合は68%と高いままだ。
計画見直し必要
埼玉県川口市にある築20年近い55階建てマンションは修繕積立金が1平方メートル当たり月93円。昨年2月に終えた工事は屋上の防水加工や壁面修復などに12億円を投じた。34年に予定する次の工事は資金が不足する恐れがある。管理組合は積立金を段階的に上げる方針だが、合意形成の壁は高く、理事長は「丁寧に説明していくしかない」と話す。
国交省の指針作りを担った東洋大の秋山哲一教授は「タワーマンションは築30年以上が少なく、機械設備や配管工事の経験に乏しい。費用増リスクを踏まえ、修繕計画を見直すべきだ」と説く。
新築時の積立金が安く、徐々に増額する手法は見直しが必要だとの指摘もある。最初から高くすると購買意欲をそぎかねず、不動産会社も安く設定しがちだが、工事費が足りなくなれば借り入れでの穴埋めか、一部工事の延期や削減でやり繰りするしかない。最初から余裕を持って集める方が中長期的な財源リスクを抑えられる。
無駄な工事を抑える努力も欠かせないが、適切な修繕に手が回らなくなるとどうなるか。日大の中川雅之教授は「マンション老朽化の速度が上がり、景観悪化や防災機能の低下を招く。周辺の地価にも悪影響が及ぶ」と警鐘を鳴らす。
(斉藤雄太、藤原隆人、蛭田和也)
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きょうのことば:マンションの修繕工事 建物の機能、新築並みに回復
▽…マンションの老朽化を防ぎ、快適な住空間や資産価値を維持するために定期的に実施する工事。国土交通省は建物や設備の性能・機能を新築並みの水準に回復する工事と定義し、実用上支障のない水準に保つ「補修」や性能向上を目指す「改修」と区別している。
▽…分譲時に不動産会社が25~30年の長期修繕計画を示し、最初はこれに沿うことが多い。計画は必要に応じ管理組合が見直す。国交省の指針は主に仮設工事や屋根防水、外壁塗装、給・排水管、昇降機など19項目を挙げる。工事周期は12~15年とされるが、20年程度で最初の工事に入る物件もある。
▽…工事費に充てるために住民が毎月支払う修繕積立金の徴収予定は、今後の工事予算とともに長期修繕計画に盛り込まれている。この計画は購入検討時に確認できるほか、買った後も管理組合に求めれば閲覧できる。現在の積立金の水準や今後の徴収額を国交省の目安と比較することで、修繕工事の財源余力を推し量れる。管理組合が作成する決算書類も参考になる。工事費が足りなければ借り入れや一時金徴収、工事の延期でしのぐことが多い。
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修繕金穴埋め、融資頼み マンション管理組合 7年連続増
マンションの修繕積立金が足りなくなっている様子は、工事費用を借り入れる管理組合の増加からも読み取れる。(1面参照)
住宅金融支援機構が手がけるマンション共用部の大規模修繕向け融資の受付金額をみると、2016年度は前年度比21%増の113億円とデータを遡れる07年度以降の最高を更新した。増加は7年連続で、17年4~12月の金額も前年同期を5%上回る。
機構の担当者は「毎月の積立金の徴収額を計画通りに上げられず、借り入れに頼る管理組合が増えている」と話す。値上げに難色を示すのは年金生活の高齢者だけでなく、「生活費のかさむ30~40代も同様」という。歴史的な低金利を生かし、一定の積立金を手元に残したまま借り入れを活用するケースもある。
建設人材の不足や資材価格の高騰で修繕工事費が当初の計画より膨らみやすいことも融資の拡大要因になっている。
さらに最近では「築10年程度と比較的新しい物件で外壁タイルが浮いて剥落の恐れのある箇所が大量に見つかり、工事費がかさむ事例が増えている」(マンション管理士の井田健氏)。一部では管理組合が施工不良を訴え、売り主や建設会社に損害賠償を求める訴訟も起きているが、こうした予期せぬトラブルも財源不足に拍車をかける。
修繕工事費の不足を借り入れで穴埋めしても、最終的には積立金増額で返済する必要がある。融資は金利支払いも発生し、住民が負担増から逃れることはできない。
【調査方法】今回の調査には不動産情報会社グルーヴ・アール(東京・港)が物件の売買記録など公開情報を収集・整理し、北海道から沖縄県まで網羅したマンション14万棟分のデータベースを活用した。
このうち国土交通省の指針との比較が可能な修繕積立金や延べ床面積のデータがある約1万4千棟を抽出。築年数や階数、1棟あたりの戸数などを幅広く捉えている。各物件の積立金に東京カンテイ(東京・品川)が持つ修繕積立基金の実勢額も加算し、国交省の積立金の目安に達しているかを調べた。
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