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銀行の稟議書は、裁判における文書提出命令があったとしても非開示が許されるものなのだろうか?

2013-11-15 17:22:06 | シチズンシップ教育
 民事訴訟法学に関連して、どうもひっかかる判例ゆえ、書きます。

 この事案では、稟議書を見れば、融資の意思決定の過程がわかり、Xの訴えに理由があるか、はっきりするのではないだろうか。

 百歩譲っても、すべて出すのが不都合なら、発言者氏名部分を黒塗りにして、提出させることができないのだろうか


 銀行は、準公共的な性格をもっていると、自分は考えます。日本経済の血液ともいえるお金の流通のかなめをになっているのだから。
 
 融資の決定における意思形成過程は、それが裁判において重要な場合は、提出されてしかるべきではないのだろうか。

 銀行と言う現場の感覚を、今度、友達に聞いてみたい。

*************************

事案:

 Xは、Y銀行から6億円の融資を受け、右資金で有価証券の一任売買を証券会社に委任したところ、多額の損害を被った。

 そこで、Ⅹは、Yの支店長Aは、Xの経済状態からすれば、貸付金の利息を有価証券取引から生ずる利益から支払う以外にないことを知りながら、リスクの高い投資をXにすすめ、過剰な融資を実行したもので、これは金融機関が負う顧客の資金運用計画についての安全配慮義務に違反していると主張して、Yに対し、損害賠償を求める訴えを提起した。


 審理においてⅩは、有価証券取引によって貸付金の利息を上回る利益を上げることができるとの前提でYにおけるXへの貸出しに関する検討が行われたこと等を証明するためとして、Yの所持する本件融資に関する貸出稟議書および本部認可書につき、文書提出命令を申し立て、各文書は、民事訴訟法220条4号の文書に該当すると主張した。

 これに対して、Yは、上記各文書が、220条4号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たると反論した。

 貸出稟議書とは:銀行内部において、融資案件についての意思形成を円滑、適切に行うために作成される文書であって、法令によってその作成が義務付けられたものでもなく、融資の是非の審査に当たって作成されるという文書の性質上、忌たんのない評価や意見も記載されることが予定されているものである。また、外部に開示することも予定されていない。


 裁判所は、文書提出命令を下すべきであろうか。

(参照判例)
・最決平成11年11月12日民集53巻8号1787頁(主要判例集431事件、百選4版69事件)


***************************



最高裁の判断:申立て却下。


最高裁のとった判断のための規範:
銀行の貸出稟議書は、銀行内部において、融資案件についての意思形成を円滑、適切に行うために作成さ
れる文書であって、法令によってその作成が義務付けられたものでもなく、融資の
是非の審査に当たって作成されるという文書の性質上、忌たんのない評価や意見も
記載されることが予定されているものである。したがって、【要旨第二】貸出稟議
書は、専ら銀行内部の利用に供する目的で作成され、外部に開示することが予定さ
れていない文書であって、開示されると銀行内部における自由な意見の表明に支障
を来し銀行の自由な意思形成が阻害されるおそれがあるものとして、特段の事情が
ない限り、「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たると解すべきで
ある。

*****最高裁ホームページ*******
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120649239191.pdf
         主    文
     原決定を破棄する。
     相手方の本件申立てを却下する。 

  
         理    由
 抗告代理人海老原元彦、同広田寿徳、同竹内洋、同馬瀬隆之、同谷健太郎、同田
路至弘の抗告理由について

 一 記録によれば、本件の経緯は次のとおりである。
 1 本件の本案訴訟(東京高等裁判所平成九年(ネ)第五九九八号損害賠償請求
事件)は、亡J(以下「J」という。)が抗告人から六億五〇〇〇万円の融資を受
け、右資金でK証券株式会社を通じて株式等の有価証券取引を行ったところ、多額
の損害を被ったとして、Jの承継人である相手方が、抗告人のA支店長は、Jの経
済状態からすれば貸付金の利息は有価証券取引から生ずる利益から支払う以外にな
いことを知りながら、過剰な融資を実行したもので、これは金融機関が顧客に対し
て負っている安全配慮義務に違反する行為であると主張して、抗告人に対し、損害
賠償を求めるものである。
 2 本件は、相手方が、有価証券取引によって貸付金の利息を上回る利益を上げ
ることができるとの前提で抗告人の貸出しの稟議が行われたこと等を証明するため
であるとして、抗告人が所持する原決定別紙文書目録記載の貸出稟議書及び本部認
可書(以下、これらを一括して「本件文書」という。)につき文書提出命令を申し
立てた事件であり、相手方は、本件文書は民訴法二二〇条三号後段の文書に該当し、
また、同条四号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たら
ない同号の文書に該当すると主張した。


 二 本件申立てにつき、原審は、銀行の貸出業務に関して作成される稟議書や認
可書は、民訴法二二〇条四号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文
- 1 -
書」に当たらず、その他、同号に基づく文書提出義務を否定すべき事由は認められ
ないから、その余の点について判断するまでもなく、本件申立てには理由があると
して、抗告人に対し、本件文書の提出を命じた。


 三 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次の
とおりである。
 1 【要旨第一】ある文書が、その作成目的、記載内容、これを現在の所持者が
所持するに至るまでの経緯、その他の事情から判断して、専ら内部の者の利用に供
する目的で作成され、外部の者に開示することが予定されていない文書であって、
開示されると個人のプライバシーが侵害されたり個人ないし団体の自由な意思形成
が阻害されたりするなど、開示によって所持者の側に看過し難い不利益が生ずるお
それがあると認められる場合には、特段の事情がない限り、当該文書は民訴法二二
〇条四号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たると解す
るのが相当である。
 2 これを本件についてみるに、記録によれば、銀行の貸出稟議書とは、支店長
等の決裁限度を超える規模、内容の融資案件について、本部の決裁を求めるために
作成されるものであって、通常は、融資の相手方、融資金額、資金使途、担保・保
証、返済方法といった融資の内容に加え、銀行にとっての収益の見込み、融資の相
手方の信用状況、融資の相手方に対する評価、融資についての担当者の意見などが
記載され、それを受けて審査を行った本部の担当者、次長、部長など所定の決裁権
者が当該貸出しを認めるか否かについて表明した意見が記載される文書であること、
本件文書は、貸出稟議書及びこれと一体を成す本部認可書であって、いずれも抗告
人がJに対する融資を決定する意思を形成する過程で、右のような点を確認、検討、
審査するために作成されたものであることが明らかである。
 3 右に述べた文書作成の目的や記載内容等からすると、銀行の貸出稟議書は、
- 2 -
銀行内部において、融資案件についての意思形成を円滑、適切に行うために作成さ
れる文書であって、法令によってその作成が義務付けられたものでもなく、融資の
是非の審査に当たって作成されるという文書の性質上、忌たんのない評価や意見も
記載されることが予定されているものである。したがって、【要旨第二】貸出稟議
書は、専ら銀行内部の利用に供する目的で作成され、外部に開示することが予定さ
れていない文書であって、開示されると銀行内部における自由な意見の表明に支障
を来し銀行の自由な意思形成が阻害されるおそれがあるものとして、特段の事情が
ない限り、「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たると解すべきで
ある。そして、本件文書は、前記のとおり、右のような貸出稟議書及びこれと一体
を成す本部認可書であり、本件において特段の事情の存在はうかがわれないから、
いずれも「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たるというべきであ
り、本件文書につき、抗告人に対し民訴法二二〇条四号に基づく提出義務を認める
ことはできない。
 四 また、本件文書が、「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当た
ると解される以上、民訴法二二〇条三号後段の文書に該当しないことはいうまでも
ないところである。
 五 以上によれば、原審の前記判断には、法令の解釈適用を誤った違法があり、
右違法が裁判の結論に影響を及ぼすことは明らかである。論旨は理由があり、原決
定は破棄を免れない。そして、前記説示によれば、相手方の本件申立ては理由がな
いので、これを却下することとする。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。


(裁判長裁判官 福田 博 裁判官 河合伸一 裁判官 北川弘治 裁判官 亀山
継夫 裁判官 梶谷 玄)
- 3 -


http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=52281&hanreiKbn=02

事件番号

 平成11(許)2



事件名

 文書提出命令に対する許可抗告事件



裁判年月日

 平成11年11月12日



法廷名

 最高裁判所第二小法廷



裁判種別

 決定



結果

 破棄自判



判例集等巻・号・頁

 民集 第53巻8号1787頁




原審裁判所名

 東京高等裁判所



原審事件番号

 平成10(ウ)774



原審裁判年月日

 平成10年11月24日




判示事項

 一 民訴法二二〇条四号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たる場合
 二 銀行の貸出稟議書と民訴法二二〇条四号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」




裁判要旨

 一 ある文書が、その作成目的、記載内容、これを現在の所持者が所持するに至るまでの経緯、その他の事情から判断して、専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、外部の者に開示することが予定されていない文書であって、開示されると個人のプライバシーが侵害されたり個人ないし団体の自由な意思形成が阻害されたりするなど、開示によって所持者の側に看過し難い不利益が生ずるおそれがあると認められる場合には、特段の事情がない限り、当該文書は民訴法二二〇条四号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たる。
 二 銀行において支店長等の決裁限度を超える規模、内容の融資案件について本部の決裁を求めるために作成され、融資の内容に加えて、銀行にとっての収益の見込み、融資の相手方の信用状況、融資の相手方に対する評価、融資についての担当者の意見、審査を行った決裁権者が表明した意見などが記載される文書である貸出稟議書は、特段の事情がない限り、民訴法二二〇条四号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たる。




参照法条

 民訴法220条4号
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