紀州の地名がついた数少ない植物の1つ。紀伊半島西岸部では当地が北限にあたるようである。個体数も少ないようで、和歌山県のレッドデータブックでは絶滅危惧2類に分類されている。図鑑の分布によると、伊豆半島以西となっているが、千葉県のレッドデータブックに記載されていることから、房総半島まで分布するようである。
この樹については、「センダン」とカタカナ書きにするよりは、枕草子にも使われる「樗」がふさわしいように思う。一つ一つの花はかなり淡い紫色をしているが、集まるとまるで紫の雲のようである。この樗であるが、南方熊楠のにとっては終生忘れられない花であった。昭和4年6月1日、熊楠は田辺湾で昭和天皇にご進講されたが、その時庭の樗の木は花盛りであったという。「ありがたき御世に樗の花盛り」熊楠