ハリーの「聴いて食べて呑んで」

日々増殖を続ける音源や、訪問した店、訪れた近代建築などの備忘録

ボルドー @東京・銀座 (※閉店)

2015年05月31日 | 東京都(老舗)

今回の上京で、一番メインと言っても過言ではなかったのが、ここ銀座の老舗バー「ボルドー」への訪問だった。創業は昭和2年(1927)。各界の著名人はもちろん、連合艦隊の山本五十六司令長官など、歴史上の人物までが客であったという日本のバー史上最も重要な店のひとつ。以前は会員制で、華族や旧財閥の人の社交場だったそう。最近になってやっと誰でも入る事が出来るようになったという格式高い店だ。ただ、今でも女性だけでは入れないんじゃないかな。もちろん名前は以前から聞いた事があったし、戦災を免れた創業当時そのままの建物が残るという事で、近代建築の視点からも一度訪れてみたかった。銀座8丁目のビルの谷間に現れる蔦の絡まる2階建の洋館。当然、他とは全く異質な空間で、その前に立っただけで何だか緊張が走り、気後れする。壁にはただ「Bordeaux」とあるのみ。 

 ← 後日、日中に撮影した唯一の照明看板

何度も逡巡したが(笑)、思い切って重厚な木製扉の前に立って、ドアノブに触るものの…開かない(汗)。焦る…。するとガチャガチャと音がして、内側から扉が開けられた。薄暗い店の中に入ると正面にカウンターがあり、吹き抜けになっていて2階への階段がある。右側には立派な暖炉とテーブル、椅子がある。一軒家なので広い。全ての装飾品、調度品が歴史を感じさせる重厚な物で、静まり返っている。マダムとバーテンダーと給仕の女性の3人、それに先客が1人。ドアを開けてくれたのはメイド姿の給仕の女性で、カウンターに案内してもらった。

緊張したままマルガリータを注文。キョロキョロと店内を見回す自分は完全に「飲まれて」しまっていたが、それにしても店の佇まいが素晴しい。いわゆる保存された文化財とは違い、まるで空気まで戦前のものみたいな感じ。先客は常連の方で、楽しそうにマダムやバーテンダーとおしゃべりをしていて、明らかに「あがって」いる自分にも気さくに声を掛けて下さった。お陰で少し落ち着いた。BGMはなし。ただただ落ち着いた空気と喋り声があるのみ。たまたま「ジリリリッ…」と電話がかかってきたが、ダイヤル式の黒電話が現役。またここのマルガリータが旨い。こんな雰囲気の中で自分がお酒を呑んでいるのが信じられない。ご高齢のマダムも気さくに声を掛けて下さり、自分も正直に建物への興味と称賛を口にした。すると、常連の方がマダムに「上の階も案内してあげなよ」と言って下さり、マダムと2人で階段を登って2階へ。テーブル席が並んでいる2階の雰囲気もまた素晴しい。出るのは「へぇ―」っと間抜けな声とため息ばかり。マダムによると、宮大工が手掛けたという内装はほとんど当時そのままで、装飾品もその頃からあるものばかりとのこと。当時すでに骨董品だったものも多いので、歴史あるものだと何百年も前のものだそう。…すごい。

カウンターに戻り、ギムレットを追加した。完熟したライムを使っているとかで、これもまた旨い。バーテンダーも気さくな方だし、常連の方が軽口を叩いて場を和ませて下さるので、リラックス出来て有難い。ゆっくりとした楽しい時間を過ごした。世が世なら自分はこの店に足を踏み入れる事は出来なかったろうし、今でも相応ではないだろうが、こうしていい時間を過ごせた事に感謝、感激。果たして、こういう店が似合う人間になれるだろうか…(ムリムリ)。心の中で再訪を誓って店を出た(勘定は¥4,000程)

※再訪を誓っていたボルドーが2016年12月22日を以って閉店するとのこと…。残念。あの歴史的建物も取り壊しの危機に…。

 ↓ 写真に撮ると明るいが、実際はもっと暗い。これから夏にかけて蔦の葉が店を覆いつくすんだろう。下右は店のコースター。

 

ボルドー (Bordeaux)

東京都中央区銀座8-10-7

 

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コメント (2)
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