森山威男 JAZZ NIGHT 2017(山下洋輔トリオ)(9月16日 岐阜県可児市・可児市文化創造センター)
往年の名ジャズ・ドラマー森山威男(たけお)氏は現在岐阜県可児市に住んでいるらしい。何でも夫人の実家が可児市内なのだとか。そんな訳でここ可児市文化創造センターで定期的にライヴ活動を行ったり、名古屋芸大の客員教授をしたりしているらしいのだが、あまりこの辺りのジャズを聴いてこなかった自分は一度も観たことがなかった。田舎にあってこの会場は、館長が招聘活動に精力的なこともあり、様々なジャンルの一流アーティストが登場する面白い劇場だ。親父(80代)がいつも「森山威男、観に行く?」と訊いてくるが、いつも「うーん…」と渋っていた(親父はジャズ好きなので結構何度も行っているのかも)。ある日こちらのHPを見ていたら、そこに「あの山下洋輔トリオ、一夜だけの復活。」とあるではないか。おーっと、こうなると話は別だ。
もちろんリアルタイムではないので自分が持つ山下洋輔トリオのイメージは、むかし日本テレビ系列で土曜の夜にやっていたタモリ司会のTV番組「今夜は最高!」ぐらいだ。とうにトリオとしての活動は無かったと思うが、創始メンバーであるサックスの中村誠一を含むメンバーがしょっちゅう出演していたので「面白れえオジサン達が居るんだなァ」と子供ながらに呆れていた(当時小学生につき、記憶違いがあるかも)。それでそこで知った山下洋輔や坂田明のやる音楽を聴いたかというとそうでなく、自分は彼らの著作を読んだ方が先だったと思う(山下のエッセイや小説、坂田のミジンコのあれね)。生であの(狂った)オジサン達の音楽が聴けるチャンス到来!
案の定、親父とおふくろもチケットを買っていたらしいので台風が近づく雨の中、一緒に行くことにする。チケットは完売したようだ。客の年齢層は流石に高いが、なかなかお洒落な紳士淑女も居て盛り上がっている。親父たちはこの会場の会員なので1階席だが、自分は随分遅れて別で購入したので3階席(涙)。
まずは森山、山下の2人。意外と静かなスタートだったが、すぐに2人ともオーヴァードライヴがかかって熱くなる。森山氏がどんなドラムスタイルなのか一部の音源以外なんの予備知識も無かったが、ブラシであんなにハードにヒットするんだね。曲が終わるとハァハァ言ってらっしゃる(御年72歳で、なんと今年に入ってから入院し、最近復帰したばかりなのだとか!)。そして坂田氏登場。いきなりフリーキーな音で、これぞ山下洋輔トリオって感じ。山下氏も肘打ちや拳で応戦する。すごい熱量だ。この3人が集まると、アーティストというよりはやっぱり「ジャズマン」という独特な感じ。曲毎に森山氏がマイクを持って(ハァハァ言いながら)MCを担当するのだが、各人の面白い昔話が聞けて楽しい。会場も笑いに包まれる(大筋はこちらでも聞ける)。
いったん舞台から下がって中入り。次は恒例だというジャンケン大会。ステージ上の森山氏とジャンケンし、勝ち残ると景品がもらえる。最初はサイン入りポスターだったのだが、次はサイン入りドラムヘッド、次はサイン入り新品スネアドラム(!)、次はあの全共闘時代の早稲田大学バリケード内での演奏を記録したサイン入りの幻のレコード!(※)、と凄いお宝を大盤振る舞い。欲しかったー。しかし俺ってジャンケン弱いなァ…。ここの館長が当時早稲田の学生で、バンドに随伴してそのレコードを売っていたりしたという裏話も。やっぱりここの館長タダモノじゃないな。
※「DANCING古事記」(OS-1129L/1130L 1969 Maro Record)(写真下・当人も持っていないそうです)
次はラッパやベースを加えての演奏。もちろん山下、坂田両氏も参加。それぞれのソロを主体とした曲の後に、有名な「キアズマ」も演奏。好々爺然としているがドラムはあくまで手数多く、ハードで力強い森山、端正で知的、かつ激情を放つ山下、飄々としているが音は多弁な坂田、とそれぞれの演奏も素晴らしい。自分には知識が無いが、参加しているメンバーは全員現在の日本でトップと言って差し支えない面々らしい。その面々の顔を見ていると、この伝説の3人と同じステージに立っているのが嬉しくてしょうがないといった雰囲気が伝わってくる。自分がこんなにフリージャズの演奏を楽しめるとは思わなかった(また音源集めるの、大変だ…)。
森山威男(ds)、山下洋輔(p)、坂田明(as)
川嶋哲郎(ts)、類家心平(tp)、中路英明(tb)、高岡 大祐(tub)、水谷浩章(b)
<Setlist>
01 ミナのセカンドテーマ
02 クレイ
03 ロイハニ
04 SUNRISE
05 GRATITIUDE
06 CHIASMA
encore
07 It Don't Mean A Thing
08 ずっと