ハリーの「聴いて食べて呑んで」

日々増殖を続ける音源や、訪問した店、訪れた近代建築などの備忘録

テレヴィジョン @名古屋・CLUB UPSET

2014年04月17日 | ライヴ(日本公演)

Television

テレヴィジョン (4月16日 名古屋 CLUB UPSET)

NYパンクの伝説的なバンド、テレヴィジョン(Television)。1978年に解散し、1992年に再結成。自分はその後の来日公演以来だからライヴを見るのは22年ぶりということになる。あの時はクラブクアトロだったかな。会場は初めて訪れるCLUB UPSET。池下のビルの5Fにある。開場時間が過ぎてから建物に向かうも、周囲には人っ子ひとりおらず、PILの悪夢が甦る。階段を上って会場へ。えっ?とビックリするほど小さなハコ。一番後ろに立ってもステージまで10mくらいだろうか。まだ客も20人位しかいない。人気が無い事もあってか、大物を除く最近の洋楽ライヴはメディアへの露出が少なく、街頭ポスターなどを含めて公演の情報が行き渡っていないような気がする。えー、来てたの?ってあとで思うライヴも多い。身近なライヴ・ハウスでチケット争奪戦も無いというのは嬉しいのだが、複雑な気分。だってあのテレヴィジョンだよ…。公演開始15分前位になってやっと人が集まってきたが、それでも150人位じゃないだろうか。贅沢と言えば贅沢。まるで彼らが巣立ったニューヨークのCBGBで見るような感覚か(行ったことありません、もちろん)。

開始予定時刻から15分程遅れて、自分達が入場した後ろのドアから普通に入ってきたメンバーが横を抜けてステージへ(笑)。もちろん皆老けたが、その佇まいは昔とあまり変わらない。オリジナル・メンバーのリチャード・ロイド(Riochard Lloyd)が抜けて、現在はジミー・リップ(Jimmy Rip)が加入している。ジミーと言えばミック・ジャガー(Mick Jagger)とも仕事をしている事もあり、アルバムも1枚持っている。そしてチューニングを始めたトム・ヴァ―レイン(Tom Verlaine)のフェンダー・ギターから「あの」音色が。最初にやり始めた曲に覚えがない。トムは歌う時に中空を見つめ、派手な動きは全く無い。特徴ある声にエモーショナルなギターの音色が重なり、またたく間にテレヴィジョンの独特の世界が広がる。ジミーはリチャード・ロイドの弾いた旋律を忠実に再現しつつ、時折控えめに独自のギター解釈を入れていくといった感じで、テレヴィジョンにこんなにしっくりはまっているとは思わなかった。もちろんトムのソロ時代からの相棒だから、トムとの息もぴったり。曲毎に神経質にチューニングをしつつ、演奏は進む。ライティングも何もないシンプル過ぎるステージ。デビュー・シングルの「Little Johnny Jewel」を挟みつつ、最近のライヴでの定番となっている公式未発表曲「Persia」へ。ちょっと中東っぽい旋律の曲で、少しだけヴォーカルが入るが、ほとんどはギターのインプロヴァイゼーション。2人のギターが絡み合い、静に入ったかと思うとじわじわと動に移っていき、そのボトムをフレッド・スミス(Fred Smith)のベースとビリー・フィッカ(Billy Ficca)のドラムが支える。何分演ったか分からないくらい長いが、その長さを感じさせないグルーヴ。いやぁ、この曲かっこいい。この曲のライヴ・ヴァージョンを公式に発表してくれないかな。そしてこの長尺の曲のあとに名曲「Marquee Moon」! 92年の来日時にはこの曲の有名なイントロでわざと外したりしていたが、今回はバッチリ緊張感を保ったまま。いやぁ、やっぱりかっこいいな、この曲。オリジナルに忠実なアレンジの演奏もうれしい。ひとつも無駄な音のない名曲(ただしアナログ・オリジナル・ヴァージョンに限る)だからアレンジする隙間が無いか。名曲が目の前で完全再現される幸せ。アンコールで1曲演ったあと、何処にあったのか小さなステージに横から引割幕がサーッと引かれ(笑)、終了。

92年の「Television」(再結成ものには珍しくこれも名盤です)以来オリジナル・アルバムの発表は無く、時折のライヴ活動といった感じの彼らだが、少しも変わらない繊細さと音色を味わうことが出来た。意外と若い人も多いなと思った少ない観客の中にはNYパンクの「パンク」という部分にだけ反応したお馬鹿さんも1人2人居たが、概ねいいライヴだった。ライヴ・アルバム発売なんて事にならないかな。

Television_2

コメント (2)
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