マダムようの映画日記

毎日せっせと映画を見ているので、日記形式で記録していきたいと思います。ネタバレありです。コメントは事前承認が必要です。

ラスト、コーション

2008-02-22 11:48:39 | 映画ー劇場鑑賞
ーラスト、コーションー LUST, CAUTION/色・戒 
2007年 中国/アメリカ アン・リー監督 チャン・アイリン原作 トニー・レオン(イー)タン・ウェイ(ワン・チアチー(マイ夫人))ワン・リーホン(クァン・ユイミン)ジョアン・チェン(イー夫人)トゥオ・ツォンホァ(ウー)チュウ・チーイン(ライ・シュウチン)チン・ガーロウ(ツァオ)クー・ユールン(リャン・ルンション)ガオ・インシュアン(ホァン・レイ)ジョンソン・イェン(オウヤン・リンウェン(マイ氏))

【解説】
日本軍占領下の上海、そして香港を舞台にチャン・アイリンの自伝的短編を『ブロークバック・マウンテン』のアン・リー監督が映画化したサスペンス・ドラマ。1万人のオーディションで選ばれた、女スパイを演じるタン・ウェイは大胆な性描写にも体当たりで臨み、演じ切る。トニー・レオンの完ぺきな中国語にも注目。総製作費40億円をかけた映像美も見逃せない。(シネマトゥデイ)

【あらすじ】
1940年前後、日本軍占領下の上海。ワン(タン・ウェイ)は女スパイとしてイー(トニー・レオン)のもとへ送られる。しかし、大臣暗殺を企てる抗日青年との間で心が揺れ動くワンは……。(シネマトゥデイ)

【感想】
アン・リー監督の「ブロークバックマウンテン」に続く、究極の禁断の愛の物語。

☆すごく気に入ったので、ほとんどネタバレです。

第二次世界大戦中の、日本軍が占領して支配している香港で、劇団に所属していた学生たちが始めた抗日スパイ活動。
ワン・チアチーは、マイ夫人と偽って、日本政府に組しているイーに近づく。
日本占領軍の犬、イーを抹殺する計画。

イー夫人の麻雀仲間になって、イーの気を引き、仲間とセックスの練習までしてイーを誘惑するが、イーはするりと逃げてしまう。

隠れ家から撤退準備中にツァオが来て、彼らの正体を暴き、怖れた学生たちはツァオを惨殺してしまう。
この事件を重慶政府がもみ消し、学生たちはスパイ活動から抜け出せなくなる。
ワンはその場から逃げ出し、行方をくらました。

その3年後の上海。
ワンは、イギリスにいる父親が再婚し、伯母の家から大学に通っている。
孤独な日々だが、少ないお小遣いの中でも、映画を見に行くのが唯一の楽しみ。

かつての仲間のクァンが、もう一度スパイ活動に復帰するよう、接触してきた。
さらに出世したイーの隙を狙う役割。
その要請に応じるワン。
しかし、今回の指令は自殺薬を持たされるような非情なもの。
今回の指令に比べたら、前回の一件は稚拙な子供騙しのお遊びでしかない。
ワンは、深い闇の世界に足を踏み入れたのだ。

前半のワンは、無邪気で純粋な女学生だったが、スパイごっこをして、結局おぼえたのはタバコとセックス。
いつも受け身で、イーの愛人になるかどうかも、仲間に決めてもらっていた。
殺人を目撃して、自分の置かれた立場がやっとわかるという世間知らずだった。

後半のワンは、死の覚悟を持ったプロのスパイ。
何が彼女をそう導いたのか、想像するしかないが、イーに強姦さながらに犯されても、彼に近づけたことににやりと笑える女になっていた。

そこから、アン・リー監督が「ブロークバックマウンテン」で見せたような、禁断の性愛の、これでもかというような描写が続く。

男も女も探るような目をしながら、ぎりぎりの快楽を模索している。

それが、逢瀬を重ねるうち、情愛が愛に変わっていくのを観客は目の当たりにする。
このへんが、監督の自信に満ちた手法でしょう。

ワンはイーに、歌をプレゼントし、イーは、大きなダイアモンドをプレゼントする。
これはイーの真実の愛の証でしょう。

ワンは、正真正銘の非情な女スパイになったはずなのに、最後の最後で叫んでしまう。「逃げて…」
これもワンの愛の証だったのでしょう。

ワンの叫びーそして、我を忘れて逃げ出すイーのみっともなさ。
ここで、二人の関係が崩れたのですよね。

 ワンとクァン

その一件の前に、ワンがスパイ組織に入った理由かとも思われる、クァンへの思いを吐露するシーンがありました。
いざ決行という時、クァンはワンにキスをします。
「なぜ、3年前にしてくれなかったのか」となじるワン。
このとき、ワンは知ったのでしょう。
「なにもかも、もう遅いんだ。自分は変わってしまったんだ」ということを。

ワンには自害するという選択肢がありました。
イーの情けを信じていたのでしょうか?

イーには、ワンを助けるという選択肢はなかったのでしょうか?
イーもまた、日本と中国の間を非情に生きる一人の男だったのですね。
そして、ワンのために我が身を危険にさらすことはしなかった。
処刑命令にサインをする。

結論は、男の愛より女の愛の方が深いーと言うことでしょうか?
あるいは、どんなに苦渋や辛酸をなめたあとでも、女は一瞬で心を翻せる、ということかなあ?
ワンは自分のすべてをかけて積み重ねてきたことを、あの一瞬で全部失ったんだものね。
敵の男を助けるために…。

しばらく、映画の余韻に浸りたいと思います。



このイーという役は、トニー・レオンしかできないでしょうね。
キャラクターの陰影の深さ、人間の厚み、しかも色男で好色でなければならない。
うーん、彼なら納得!!でした。

新人のタン・ウェイはすごい。
トニーを相手に、あれだけの演技、まあ、恐れ入りました。

アン・リー監督が「ブロークバック~と対をなす映画」と言ったのを新聞で読んでいたからか、途中からブロークバックのイメージと重なって行きました。
先日亡くなったヒース・レジャーの切ない表情が浮かんで、悲しくなりました。

 イー夫人のニュートラルな感じ、よかったです。
夫の浮気をかぎとっても、ちっとも騒がないのね。
これも、ワンとは違う女の生き方でした。

麻雀のときの女たちの会話、麻雀のルールなど、もっと深い意味が分かったら、なおのことスリリングで面白かったことでしょう。


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6 コメント

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こういった (miyu)
2008-02-23 11:33:12
官能的な映画って深い余韻を残したりしますよね。
「愛のコリーダ」を観た時、
しばらくその余韻が続いたのを読んでいて
思い出しました。
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なかなか・・・ (NAKAちゃん)
2008-02-23 15:17:22
アン・リー監督作だから 見たいと思っていたのですが ちょっと退いています。
マダムのブログで予備知識をしっかり入れてからだと安心して見れるかと 思っていたのですが 辛そうですね・・・
この映画 近くでは夕方からしか上映していないのです。やはりR18だから??
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miyuさんへ (よう)
2008-02-24 10:32:56
「愛のコリーダ」!
見たけど、もうずいぶん前だわ!
miyuさん、いつごろ見られたの?
リアルタイムだと、かなりなお年?(ゴメンナサイ…)
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NAKAちゃんへ (よう)
2008-02-24 10:35:57
そんなに辛くはないけど、面白かったし、いい映画だと思いました。
あの、性描写に映画館で耐えられるかどうかだなあ。
ちなみに私は、隣は男性だったけど、全然平気でした。
昼間から、大勢の人とそういうシーンをじっと見ているのが、変だなあと思ったくらいでしたよ。
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題名~ 観終って納得! (cocco)
2008-02-25 00:49:22
この前 主人と観てきました。
いつもながら 主人は一番後ろの席。
わたしは 目が悪いのもあって前よりの席。
あ~~~ 隣じゃなくてよかった~~~
じっくり 観れました。

マダムのすきのない感想で 改めて筋をなぞれました。

節目 節目にでてきた煙草のシーン・・・
ワンの吸い方も だんだんさまになってきましたー
プロのスパイになってきたのですね。

イーの 最後の逃げる姿は 我が身かわい 
人間くさくてよかったな。 

そうそう ワンの料亭での歌と踊り~ かわいくて魅力的でした!
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coccoさんへ (よう)
2008-02-25 08:21:35
ご主人と鑑賞?
いいですねえ。
男の方の感想も聞いて見たいです。

私もあのイーが逃げ出すシーン、好きです。
トニー、うまいですよね。
あんなところにも、色気がありました。

今度見る機会があれば、ワンもですが、イーの変わって行く様子をじっくり見たいわ。
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