マダムようの映画日記

毎日せっせと映画を見ているので、日記形式で記録していきたいと思います。ネタバレありです。コメントは事前承認が必要です。

徘徊 On The Road ママリン87歳の夏

2015-04-08 16:05:48 | 映画ー劇場鑑賞

ー徘徊 On The Road ママリン87歳の夏ー

2015年 日本

監督=田中幸夫 出演=酒井アサヨ 酒井章子

 

【感想】

私も十数年前から母と暮らしていて、母もアサヨさんと同い年。

しかも、撮影されている場所が、うちのご近所。

毎日通る場所がスクリーンに現れました。

 

なんか、他人事じゃないわあ。

 

ギャラリーを経営する章子さんは独身。

アサヨさんは夫を亡くしたあと、奈良で一人暮らしをしていたが、認知症となり、ご近所からも苦情が来るようになったので、章子さんが自宅に連れて帰って、それ以来、6年間同居している。

最初の半年程は、家に閉じ込めていると玄関ドアをどんどんと叩き、制止すると暴言、暴力で罵倒されたという。

ケアマネージャーに付いてもらって、デイサービスに通い出し、少しき落ち着いたものの、やはり扉を叩いて出て行こうとする。

ある日、扉を開け、都会の雑踏の中にママリンを解き放ったー。

 

母娘二人の会話は漫才のようにおかしかったです。

劇場内からも笑い声が起こっていました。

 

よく聞いていると、アサヨさんにはアサヨさんの言い分があるんですね。

アサヨさんは認知症になり、ある時からいままでの記憶がないんですね。

だから、目の前の章子さんが自分の娘だと言われても、自分の記憶にあるあっこさんは幼い少女なので、この人は知らない人だと思う。

もちろん、章子さんの家は自分の家ではない。

自分の家は故郷の門司にあるのだ。

そうではないと教えられ、納得したかに見えても、記憶の蓄積もないのですぐに過去に戻ってしまい、今ここにいる自分が理解できず、混乱し、不安でいてもたってもいられなくななるようです。

1日に4回の徘徊、雨が降っても、夜になってもマリリンは歩き続ける。

 

こういうお母さんをお世話する娘は本当に大変。

わかっていても、情けなく悲しい日々が続いていたことでしょう。

 

どこかで吹っ切った章子さんは素晴らしいと思いました。

 

ちんぷんかんぷんな会話を「一応会話になっているでしょ?まだ、人間性があるのね」という章子さん。

娘ならではの言葉だなあ、とじんわり目頭が熱くなりました。

 

人間の生命力って凄いし、生きようとするエネルギーも凄い。

老いても、認知症となっても、人は生きようとするのだなあ。

それが徘徊となってほとばしる。

ほんと、周りの人間にとっては大迷惑な話だけど、それも人生だし、私たちの未来だものね。

 

いい作品でした。

ロードショー公開ではないので、見る機会は少ないですが、ぜひご覧下さい。

 

第七芸術劇場では、4月24日まで上映日が延長されました。