物質・材料研究機構(NIMS)と東京理科大学の研究グループらは、電子ビームを使った顕微鏡において、電子のエネルギーがゼロに近い領域から高エネルギーまでの広いエネルギー範囲でナノ薄膜を一度に計測する新発想の汎用の分光顕微鏡技術を開発し、その有効性を実証した。
単色入射電子ビームのエネルギーを変化させ電子光学系を再調整しながら電子顕微鏡像を計測する手間のかかる従来の方法ではなく、基板物質内で生成した広いエネルギー分布を持つ二次電子を仮想の白色電子源としてナノ薄膜を観察する発想を転換した新手法を開発したもの。
その実現にあたって、二次電子に含まれるバックグラウンド信号を完全に除去する必要があり、そのために天文学で望遠鏡の微弱信号の精密検知に利用されていた4点計測法を発展させてナノ薄膜に適用した。
それによりグラフェンの電子透過率をゼロに近い領域から600電子ボルトまでの広い範囲で一度に計測し、その実測値が理論値と良く一致することを確認した。
二次電子の信号に隠れていたナノ薄膜の電子透過率という物性情報を引き出すことは、今回初めて報告された。